【あんスタ】溺愛し過ぎるカレと鈍感過ぎる転校生【日々樹渉】

第24話：友也side ページ30

友也side……


ガチャッ
友也「すみません遅くなりまし…た………………ってヒィ！」

放課後、創達との話が長引いてしまった俺は慌てて演劇部室へと駆け込んだ。が、そこには目を疑うような光景が広がっていて思わず小さな悲鳴が漏れた。

友也「えぇ、いや……何かあったんですか？主に変態仮面が」

そう、驚く事にあの変態仮面が部室のソファにうずくまってこちらに背を向け、何度もため息をついているのだ。


北斗「あぁ、お前も知っているだろうがどうやらAの件らしい」
友也「Aって……転校生の…？」
友也(上手くいっていないらしいってのは噂で聞いていたけど、真逆そのせいで…？)

北斗先輩は察せと言わんばかりの視線と共に簡潔に部長の有り様を説明する。


北斗「まぁ見ての通り、あれだけ毎日五月蝿かった部長はもぬけの殻だ」

なるほど、と苦笑いを浮かべながら俺は改めて部長へと目線をやる。

友也「う〜ん、願ってもない状況だけどこれはこれでなぁ…あ、あのう……？」


実際俺は、あれ程に部長が何かに夢中になっているのを見るのは演劇以外では初めてだった。

渉「………………」

やっぱり無反応か、と思っていたが部長の息が微かに漏れているのに気が付く。

渉「……ひ…………くで、す」

友也(なんか言ってる……！？)

北斗「『私は表現者失格です……』先程からうわ言のようにずっと言っているんだ」
友也「表現者失格……ですか」

一体どういう事かと考えていると北斗先輩が付け加える様に話し始めた。

北斗「己を愛の伝道師と謳っておきながらその実、Aに未だ気持ちが伝わっていないらしい事が余程ショックだったのだろう…フッ、さすがに少し不憫になってきた」
友也「北斗先輩……ちょっと楽しんでません？」
北斗「あぁ、部長にもこんな一面があったのかと思うとな」

心做しか嬉しそうに語る北斗先輩を見て、俺も微かに笑みが零れる。

友也「確かに、奇人変人の部長にも、ちょっと親近感って感じはありますけど……なんだか見てられないなぁ……おーい、へんた…部長……？」

そう俺が改めて声を掛けるとやっと気付いたようで変態仮面はこちらを向いた。

友也「あ〜もう！…しっかりして下さいよ！」
北斗「友也の言う通りだ。こう見えて俺も友也も、応援している。」

そう言うや否やあっという間に部室には部長の笑い声と共に、鳩や薔薇が舞っていつもの変態仮面が帰ってきたのだ。






と、思っていた。
翌朝の光景を見るまでは。

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