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「Aちゃんは甘いの好き？」
『…うん、まあまあ好き』
「じゃあ、パンケーキとクレープだったらどっち？」
『それは、…難しい、決められないかも』
今日の帰りはどうするの、と聞いてくれた陽菜ちゃんに、樹くんに誘われて遊びに行くのと言うと、目を真ん丸くして驚いていた。それからちょっと心配そうに、一緒に行こうか、と言ってくれた。
本当はすごく来てほしかったけど、レッスンのずる休みに気づかれてしまうかもと思ったら、大丈夫だよ、と首を横に振るしかなかった。
「…ねえ、Aちゃん」
『え？……ごめん、なんだったっけ、』
「なんか悩み事でもあるんじゃない？」
『え、…ううん、…なんにもないよ』
「うそ、今日ずっとぼーっとしてんじゃん」
樹くんは、とりあえずどっか適当に入って座ろうか、なんて言いながらさり気なく私の手を取った。
やっぱり色々と慣れてるんだな、とか、身の危険を心配されるほどうわの空だったのかな、とか。樹くんにされるがままで、ぼんやり考えた。
「…嫌がらないんだ？」
『え、？』
「あれ、繋いでんの気づいてなかった？」
『……あぁ、』
陽菜ちゃんもよくこうやって繋いでくれるから、友達なら普通のことかと思ってた。正直にそう言えば、樹くんはさも楽しそうに笑う。
「じゃあ俺はまだ、お友達枠ってことか…」
『…違うの？』
「っふ、いやまあ、お友達なんだけどさ」
女の子ならまだしも男の子の友達なんて、慎ちゃん以外に出来たことがないから。含みを持たせた言葉や繋がれた手の意味とか、樹くんが今何を考えているのかとか、そんなこと、私にはわかるはずがなかった。
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年7月23日 20時
