６９話 ページ25
桜哉said
「職員室から鍵借りてくるから、ちょっと待ってて。」
「はーい。」
「了解っす！」
「「･･････。」」
期せずして、安田と２人きりになってしまった。
でも今なら、楯野がいると出来ないことが出来る。
例えば、こんな･･････。
「安田。」
「なんすか？」
「楯野の事好きなの？」
こんな、自分から弱みを晒す馬鹿な質問だって出来てしまう。
そういえば１年生の時、広岡から同じような事をされた。
その時は“バカなのかコイツ”と思って･･････まあ実際広岡は馬鹿なのだが、
まさか１年後、自分も後輩に同じ事をするとは思わなかった。
「はい！大好きっす！」
「え、あ、そ、そうか。」
無邪気に即答する安田につい動揺してしまったが、これではっきりした。
やっぱり、安田は楯野の事が･･････。
「あ、勘違いしないで下さいよ？先輩としてっすから！」
「え。」
「そんなに心配しなくても、菜々花先輩を取ったりしないっす！」
「･･････。」
まあ、そりゃバレるよな。広岡のような悪あがきは止めておこう。
「もう１つ聞いていいか？」
「どうぞ！」
「何で楯野の事･･････その･･････下の名前で呼ぶの？」
あー恥ずかしい。何でこんな事聞いてるんだ女々しすぎだろ俺。
「如月先輩ってそういうの気にするんすね！意外っすー！」
「誰にも言うなよ･･････。」
「男同志の秘密っすね！僕、秘密は守る男っす！」
「そりゃ結構だ。──で、答えは？」
「僕の保育園の時の先生が“たての”っていう名字だったからっす！」
「･･････は？」
「楯野先輩ってどうしても変な感じがしたんで、菜々花先輩って呼ぶ事にしたっす。」
「何だそれ･･････。」
「てか、それで嫉妬してたんなら先輩も下の名前で呼べばいいじゃないっすか！」
「俺は別に嫉妬してた訳じゃ･･････。」
「僕と練習するっす！はい、リピートアフターミー！菜々花！」
「お前話聞いてたか？」
「ほら、菜々花！」
「･･････な、菜々花。」
「いい感じっす！菜々花！」
「菜々花。」
「菜々花!!」
「菜々花！」
「鍵借りてきたよー･･････あれ、何か楽しそうだね。」
「うわっ、菜々･･････楯野。」
「おかえりっす！」
「･･････？た、ただいま。」
「･･････。」
──今はまだ、楯野でいいや･･････。
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作者名：鈴蘭姫 x他1人 | 作成日時：2017年3月19日 10時
