【名探偵コナン】転生作家の心得 (ページ28)

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27 .『とある大女優からのお誘い』ページ28

今季アニメのエンディング曲のサビが流れて、私は目を覚ました。布団のそばに置いてあったスマホを手に取ると、通話をタップする。

「……もしもし」

寝起きだからか、何時もより低い声が出た。その中で、耳に飛び込んできたのはマシンガントークだった。

「あれ、Aちゃんもしかして寝起き？なら、後で掛けなおそうか？それとも今でもいい？」

テノールが、心地よい。この声は聞き覚えがある。それと、低いとは思うけど、そこまで声は変わらないはずなんだが、貴方、エスパー？

「……大和さん、今でいいです。どうしたんですか」

私の執筆した『高杉隼人の事件簿』の出版社の編集長だ。母の知人で、賞を取る前から誘われた。恩人の一人だ。

「ねぇ、ハリウッド女優のクリス・ヴィンヤードって知ってる？」

大和さんの口から出てきた名前に、一瞬誰のことか分からなかった。しかし、ぐるぐると考えたあとに一人だけ脳内にヒットした。

そして、スマホを耳に当てたまま、顔を手のひらで抑えた。

――ベルモットじゃん。

「おーい、Aちゃーん？」

大和さんが心配そうな声で呼びかけている。私は気を取り直して、知っていると肯定した。そうだった、この人は世間ではクリス・ヴィンヤードとして活躍しているのだった。

「お、なら良かった。彼女がね、非公式でAちゃんに会いたいんだって」

大和さんの口から飛び出てきた爆弾発言に、もう一度、掌で顔を覆った。

何でやねん。

「何でですか……」

私の言葉を拾った大和さんは喜々として、彼女からの電話の内容を教えてくれた。

「突然本人から電話が掛かってきて、丁度日本に滞在する用事が出来たのと、それで本が出版されたから、どうしても、ファンとして、海月先生に会いたいんだって」

何でやねん。

本日二度目の本音が心に浮かぶ。さて、どうしたものか。これ、断ったら後が怖いな。何だって、公共物の建物も容赦なく壊しちゃう、人を縮んじゃうような毒薬を作って試しちゃうブラックな組織の一人だからね。

意を決して、私は顔を上げるとそれを受けることを告げた。理由は簡単だ。

後ろから狙撃されたくないからである。