【名探偵コナン】転生作家の心得

26.『転生作家の喜び』 ページ27

「な、なんで稲葉山刑事殺したんですか先生ええええ！！！」

ポアロへ入るなり肩を勢い良く揺らされる。客の視線がかなり痛い。あ、やばい、脳がシェイクされてる。慌てて安室が取り繕うことでなんとか解放された。ふらふらした頭で珈琲を注文するといつもの席へと落ち着いた。

パソコンを取り出し、叩き始めてもおいおいと泣き真似をしながら愛梨は私に絡んでくる。おい鬱陶しい。

「見てくださいよこのタグ！かなり絶叫されてますよ！」

スマホの画面を押し付けられるようにして見せられた。というか、稲葉山かなり人気だったのか。

「知るかよ」

愛梨の様子に結構苦笑いをうかべつつ、安室が珈琲を持ってきた。

「元々、彼は途中退場させるつもりだった。その為に作ったキャラだ。書いてただろ、後書きに」

珈琲のカップに手を伸ばし、私がつらつらと述べると、彼女はやや落胆したように頷いた。

「今回はスケールが大きかったですね。まだイギリス出張編続くんですか」

安室がこちらを見て笑顔を浮かべるので、肩を竦めた。君達、作者がいるからって何でも聞き出そうとするのやめようね。

「私に言わせるか。」

軽く笑いながら、彼はキッチンカウンターへと戻っていく。愛梨も同じだ。

「稲葉山刑事って、種田警部の部下だけど、かなりハイスペックだよね。高杉と同じくらい」

蘭と一緒に座っていたコナンが体ごと此方を向ける。そうだったな、君は早く見てたね。

「作った私が言うのもなんだが、高杉よりやれる事多かった。欠点つければよかった。」

畜生とつぶやけば、周りが苦笑いを浮かべている。稲葉山刑事とは、私の小説に出てくる警官だ。英国帰りの敏腕刑事であり、主人公である高杉隼人とも交流が深い。かつ、高杉の過去をよく知るキーパーソンだ。兎に角何でもできる。序に性格も良いし、ルックスもよい。

今回のシリーズで、最後、事件の犯人が仕掛けた爆破事故に巻き込まれて死んだという表現を私が書いたのだ。

「僕は良い終わり方だったと思いますけどね。まあ、人それぞれですし。」

言うと思った。稲葉山のモデル誰かわかるか？赤井だぞ、赤井。本人に言っているからな、相当可笑しくて仕方ないだろう。

ちなみに感想は稲葉山の事触れられてないんだがな。いや多分あれ、知らないふりしたな。私は仲良く人の本で談義する店員を横目に珈琲を啜った。

27 .『とある大女優からのお誘い』→←25.『上賀茂愛梨の不運　その後』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す