【名探偵コナン】転生作家の心得 (ページ18)

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17.『上賀茂愛梨の不運　その参』ページ18

なにか冷たものが顔面にかけられ、眼を薄っすらと開けると、薄暗い空間に、大勢の男たちが見えた。しかも、柱に縄で両手両足を縛り付けられていた。目の前にはグラスを持った人間がいることから、その中の液体をかけられたのだと推測できる。薬品じゃないのは直ぐにわかった。

「おはよう、お嬢ちゃん」

真正面には、海月先生曰く「倒される悪役」のような格好と風貌をした男が椅子に堂々と腰を下ろしていた。

「……どちら様、ですか」

なるべく威嚇するように低い声で尋ねた。状況確認をすれば、グラスを持った男と、目の前の男の他に、複数、それも10人以上明らかに怪しそうな男たちがこちらを見ている。

グラスを持った人は見たことがあった。

「それは知らなくていい。お嬢ちゃん、正義の味方みたいだったって？それなら、相応の力を持っとかなきゃ」

酷く、冷たい視線だ。抑揚のこもっていない、背筋が凍りつくような発言だった。それだけで威圧を覚えるような。

「私を、殺す気ですか…」

そんな訳がない。それならば早く殺しているはずだ。しかし、一応聞いておいた。

「まさか。しかし、はい、さようならと帰すわけにはいかない。そこで、だ」

リーダーなのだろう男はそこで仰々しく言葉を切った。その言葉の先が容易に想像できた。

「我が息子と婚約しないかい。悪くない話でないと思うよ、君は命が助かり、良い待遇が待つ。私達は君のような美しい子が息子を支え、子供が生まれると助かる」

ほら、やっぱり。そう思いつつ、その回答に私はごくりと唾を飲んだ。海月先生ならば、テオリーだとか言って一蹴しそうだ。

「さぁ、どうするお嬢ちゃん」

取り敢えずこの質問から逃げよう。私は、脳細胞を必死に動かす。

「か、家族に連絡させてください！私、家族と暮らしていて、流石にあなた達じゃ、大変なことになるでしょう？」

その言葉に図星だったらしく構成員が詰まった。携帯を取られているのは大体分かる。基本がそうじゃないか。

「そうかい。じゃあ、してもらおうか」

乗った。愛梨は次の手を考える。この場合、尤も、信頼できるのは。

男達が携帯をいじっている。私は意を決して言った。

「い、一番上の海月さん、です」

あの人しか、いない。