【名探偵コナン】転生作家の心得 (ページ13)

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12.『転生作家の不調　その弐』ページ13

「海月先生、流石に引っ越したほうがいいと思いますけど」

勝手知ったる様子で愛梨が淹れたお茶を片手に安室は何回も言われている言葉を吐いた。

「気に入ってるからいい」

「そういう問題じゃないです」

パソコンを取り上げられ、代わりに目の前に茶が置かれた。犯人は安室で、彼の側に置かれてしまった。

「病人が何やってるんですか」

そっくりそのまま返してやろうか、ワーカホリック。公安に組織にポアロの仕事をこなすお前が本当に怖いよ私は。

「その病人の家に上がり込んだお前らに言われたくないな」

愛梨が私の言葉に即座に切り返えした。

「体調悪いときって皆でいたほうが心強く」

「ならん」

昔から一人なのだ。小学校高学年から基本一人だったし、大学入ってからはずっと独り暮らしだ。

「まぁ、人肌寂しいって言いますもんね」

安室も愛梨の言葉に便乗した。本当にいい雰囲気なのでさっさと帰っていただきたい。

「それに先生は、いつか野垂れ死んじゃいそうで」

愛梨がハンカチを目元に当てて、泣くふりを見せてきた。

「なら刺されて死んだ方がましだな」

「何の話やってるんですか」

平然とベクトルの可笑しい話を繰り広げる二人に安室は苦笑いを浮かべた。

「別に何もしないんで寝てても大丈夫ですよ」

「なら帰ってくれ」

やや船を漕ぎつつも、起きている海月に安室は肩を竦めた。食材が少なかったので、愛梨は買い出しへと出て行った。彼女の方がこの辺の地理は詳しいからである。

警戒心が酷いが、懐に入れてしまうとやたら甘い人物だというのはよく知っている。"昔から"そういう人だからだ。

ごとりと、テーブルが音を立てた。やや驚いて見てみれば、耐えきれなかったのか卓袱台に右頬をくっつけて眠っていた。睡眠が極端に短くとも動ける安室にとって、海月の反応が遠いものに見えた。

「貴方は忘れてしまったのかな」

___自分は覚えているというのに。

安室の言葉は拾われずに落ちた。

＊
酷く懐かしい夢を見た。やるせない気分が湧いてくる。そんな、夢だった。

薄っすらと眼を開けると、天井が見えた。ボロいなと考えながら起き上がると、やや散らかっていた部屋が綺麗にされている。犯人はあいつらだ。原稿で引き篭もっている時もこんな感じなので、もう慣れたが。

彼奴らは、何処だろうか。他の部屋にいないよなと思っていると、卓袱台にメモが置かれていた。それを取ると、帰ったことがわかった。後、何故安室の連絡先がある。いらん。