はるいあお。 (ページ3)

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第2話　他人依存症(1) ページ3

「そういえば海野君、こんな話してたから思い出した。川越さんって、すっごくしっかりしてるよね」

「ゆあちゃんのこと？そうだねぇ。あの子は一人で何でも出来ちゃいそうに見えるねぇ」

「......女の子のこと、名前で呼んでるの？」

「ナミちゃんのこと、名前で呼んで良いの？」

「......。」

彼女は質問に質問で返されると困るって顔をした。こういう答えの無い質問に弱いのだろう。彼女を困らせることを自分だけが知れたと、少しだけ、楽しくなった、

「沈黙は肯定かなぁ」

＊

(うわ、教室入り辛い)

顔を真っ赤にしている波原さんと、楽しそうに笑う海野くんがいた。

(こういうの迷惑だから、外でやってくんないかなー)

入りづらい教室、動かない足。
忘れ物をしたから早く取って帰りたい。
放課後にいちゃつく男女の存在など、私にとって迷惑以外のなにものでもなかった。

ひたすら気付いて貰えるのを黙って待っていたら、部活の先輩が通りすがった。

「ん、もしかして川越さん？どうしたの？」

「教室に忘れ物しちゃったんですけどねー......」

チラ、と中の方を覗く。
先輩は察したように「ああ......」と呟いて、「大事なもの？部活来るの遅くなる？」とだけ私に聞いた。

「大事なものですね。筆箱も一緒に置いてきちゃいましたから、無いと部活出来ないかも。遅れちゃったらすみません」

「謝らないで。川越さんのせいじゃないよ。......仕方ないけど、困るよね」

うん、困る。自分達の身勝手さで私に迷惑をかけないでほしい。

「待ちますよ。遅れちゃったら本当に申し訳ないけど、彼らの青春の時間を邪魔するほどの価値は感じないから」

先輩は目を見開いて、言葉を喉に詰まらせた。じゃあ、先に、と弱々しい言葉だけを呟いて行ってしまった。

また私は本心と逆のことを言う。
(いや、貴方が相手じゃなければきっとこんなことは言わなかった)
いや、これだって私の本心の一つなんだ。
(その心だけがすべてだったら良かったのに)

ドクドクと心臓が高鳴る音が響く。
こんなに心臓がうるさいのに、彼らはまだ私の存在に気付かない。
とても迷惑に感じていたはずなのに、今だけはどうしてか嬉しかった。