検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:3,450 hit

第5話 連(れん) 6 ※閲覧時、若干注意 ページ15

何秒後に、君を手に入れることができるのだろう――?

祭りの輝かしい雰囲気が僕らを照らす。君は屋台ばかり見ていたし、僕は君ばかりを見ていて、会話なんてろくになかった。

「これ下さい!」

笑う君の横顔。

「次はあそこに行きたい!」

子供かよ、そう思いながらそっと指先に触れた温度。
今の僕はこれから見る花火よりも熱いような気がする。ただひたすら君が欲しい。
好きだ、と言いたい。もう、隠せない。

パーン、一つ目の花火。赤色。小さい。
ヒュー、ドロドロ。
パーン、パーン、二つ目、三つ目、連続で上がってきた。黄色に緑。
四つ目はナイアガラ。
五つ目は……音は間違いなくしているのに、なぜか僕の目には見えなかった。

えっ?

ハッと僕は意識を戻す。どういうことだ?訳が分からない。

「貴方は随分、奥手なんですね」

唇をごしごしと着物の裾でぬぐいなら君はそういった。


「え、今……」

君は僕に、キスをした。ほんの浅く、やわらかなものだったけど。

「貴方が何もしてくれないから、我慢できなくて。こっちからしちゃった」

照れ笑いながらそういう瞳は何故か涙ぐんでて、勇気を振り絞ってしてくれたのだと思うと――昂ぶりは抑えきれなくて。

夜。暗闇。人気はない。祭り。デート。二人きり。
そして、キスした後。「君」から「僕」に口づけたあと。


「君はもう少し――男というものを警戒した方が良い。それに、場所もだ。これからは選んだほうがいい、覚えておいて」

今から僕がすることは、君に嫌われてしまうようなことかもしれないけど。
ごめん、純粋で美しい僕の宝。
ずっと僕の手で君を汚したかった。もう、限界だ。

「……?どうしたの、いつもと雰囲気が違…………えっ?」


着物というのは……随分薄い布で出来ているのだな、と思う。
女の子のからだというのは、随分柔らかく出来ていたのだな、と思う。
僕の体はそれに比べれば存外ひょろくても女の子に比べれば、がっしりしているのだな、と思う。
女の子は汗を嫌うけど、案外悪いものでもないのかな、と思う。
女の子は化粧を好むけど、たとえ化粧が少しくらい落ちてしまっても、頬が紅潮する瞬間はあるのだな、と思う。

君はこんな僕さえ拒もうとはしないのだな、と思う。
夏なのに、熱さを望むことがあるのだなと思う。
もう今僕に、理性は無いのだと、思う。

第5話 ren(れん) 7→←第5話 簾(れん) 5



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
設定タグ:アンチ , 恋愛 , 小説   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Sei | 作成日時:2017年6月17日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。