第5話 連(れん) 6 ※閲覧時、若干注意 ページ15
何秒後に、君を手に入れることができるのだろう――?
祭りの輝かしい雰囲気が僕らを照らす。君は屋台ばかり見ていたし、僕は君ばかりを見ていて、会話なんてろくになかった。
「これ下さい!」
笑う君の横顔。
「次はあそこに行きたい!」
子供かよ、そう思いながらそっと指先に触れた温度。
今の僕はこれから見る花火よりも熱いような気がする。ただひたすら君が欲しい。
好きだ、と言いたい。もう、隠せない。
パーン、一つ目の花火。赤色。小さい。
ヒュー、ドロドロ。
パーン、パーン、二つ目、三つ目、連続で上がってきた。黄色に緑。
四つ目はナイアガラ。
五つ目は……音は間違いなくしているのに、なぜか僕の目には見えなかった。
えっ?
ハッと僕は意識を戻す。どういうことだ?訳が分からない。
「貴方は随分、奥手なんですね」
唇をごしごしと着物の裾でぬぐいなら君はそういった。
「え、今……」
君は僕に、キスをした。ほんの浅く、やわらかなものだったけど。
「貴方が何もしてくれないから、我慢できなくて。こっちからしちゃった」
照れ笑いながらそういう瞳は何故か涙ぐんでて、勇気を振り絞ってしてくれたのだと思うと――昂ぶりは抑えきれなくて。
夜。暗闇。人気はない。祭り。デート。二人きり。
そして、キスした後。「君」から「僕」に口づけたあと。
「君はもう少し――男というものを警戒した方が良い。それに、場所もだ。これからは選んだほうがいい、覚えておいて」
今から僕がすることは、君に嫌われてしまうようなことかもしれないけど。
ごめん、純粋で美しい僕の宝。
ずっと僕の手で君を汚したかった。もう、限界だ。
「……?どうしたの、いつもと雰囲気が違…………えっ?」
着物というのは……随分薄い布で出来ているのだな、と思う。
女の子のからだというのは、随分柔らかく出来ていたのだな、と思う。
僕の体はそれに比べれば存外ひょろくても女の子に比べれば、がっしりしているのだな、と思う。
女の子は汗を嫌うけど、案外悪いものでもないのかな、と思う。
女の子は化粧を好むけど、たとえ化粧が少しくらい落ちてしまっても、頬が紅潮する瞬間はあるのだな、と思う。
君はこんな僕さえ拒もうとはしないのだな、と思う。
夏なのに、熱さを望むことがあるのだなと思う。
もう今僕に、理性は無いのだと、思う。
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作者名:Sei | 作成日時:2017年6月17日 9時