第4話 聯(れん) 3 ページ12
神社の境内の階段に座り、隣の馬鹿とジュースを飲む。
「おーい秀？何見てるんだ」
「合格通知」
「お前高3のこの時期にそんなもん見るってえげつなすぎだろ‼いいよな、合格者は余裕で。何学部だっけ？」
「医学部」
「お前が！？つーか何でさっきから全部単語で答えるんだよ！！」
「なんだよ別にいいだろ医者でも！！ヒトノイノチヲスクイタインデスヨ」
「この棒読みだよ！」
「人っつっても女の子限定なので」
「チャラ男かよ！！俺も診(み)てくれよ」
「イケメンになったら考え直してやるさ」
一瞬だけ、会話が途切れる。
ふと、思い耽り、オレンジジュースを口に含む。
境内を見回すと、そこに君はいなかった。
当たり前か、と自嘲した。
□■□■□■
「今日も"来てくれた"んだ？ありがとう‼」
君はいつも何かを見透かしたように、僕が、君に会いに来てくれたって口にしていた。
だけど君に会いたいのはいつだって、僕自身の方だった。
実際、君を捜し、会いに行っていたのもいつだって僕の方だった。
「今日は何して遊びましょうか」
「君は僕と遊びにここに来てるの？なら学校に戻ったがいいよ」
「さっきね、買っといたんだ、絵馬‼俳句とか、五七五とかじゃなんか味気ないからさ。漢詩にしよう！漢詩を書こう！！」
「自分で作るの？それ、ハードル高すぎない……」
「好きな詩(うた)を探してくれても勿論良いですよ。持ってるでしょ？スマートフォン」
「まぁ、それなら」
「私に向けた詩を選んでね」
「ソレハナンデデスカ」
「あ、私のこと好きだった？告白は自分の言葉が良いってのなら聞いてあげます」
「いや、普通に書きますね」
「つめたーい」
冗談じみた彼女の言葉は、案外核心をついたようだった。
高校に男友達はいたが、かわいいと思う女の子はいても、好きになるほど会話はしない。
授業をさぼりがちな僕を警戒しているような、恐れているような感じだった。
それに、君は――。
艸色�戌慳�色黃
桃花歷亂李花香
東風不爲吹愁去
春日偏能惹恨長
草色は �戌悗箸靴� 柳色は 黄なり、
桃花は 歴亂として 李花 香し。
東風 爲に愁ひを 吹き去らず、
春日 偏へに能く 恨みを惹いて 長し。
「賈至ですか」
「ダメですか」
「いいえ、問題ないですよ。愁いとは？何かお悩みでも？」
「いや、そんなのは……なくもないかな」
「聞いて差し上げましょう！」
「何か上から目線じゃない？いいけどさ……」
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作者名：Sei | 作成日時：2017年6月17日 9時
