はるいあお。 (ページ2)

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第１話　人それぞれの正義の形(2) ページ2

「そんなに困る質問だった？ごめんね。ゆっくり考えて良いんだよ」

いつもと少しだけ違う、諭すような口調だった。

「えっ......どうして？」

口をついて出た言葉だった。

「そこを『どうして』って聞くなんて......やっぱりナミちゃんは不思議だねぇ」

「折角、海野君が私に何か教えようとしてくれているのに、これ以上時間を取らせるのは不誠実だよ」

「あーなるほどねぇ、少しだけ君がわかったよ」

妙な沈黙が5秒ほど流れた。
わたしは何も言えなかったが、彼はなにかを考えているようだった。

暫くして、彼はぽつぽつと言葉を紡ぎ出した。

「2分だけ、何も言わずに話を聞いて欲しい」

「ナミちゃんの言う『正しさ』は、誰かに迷惑をかけないことなんだね」

「君はそれを当たり前じゃない？って言うような気がする」

「だけど、オレが聞きたいのはね、君のオレへの気遣いじゃなくてさ」

「君がどれだけでも好きなように時間をかけることを許された中での、君の心に基づいた質問への答えなんだ」

「最後にもう一度聞くね、ずっと正しくあろうとすること。ナミちゃんは疲れないの？君の心を常に疲れさせるのなら、それは正しさじゃないと、オレは思うんだ」

次の授業は移動教室。
辺りにはもう誰も人はいなかった。

私は生まれて初めて、学校で泣いた。

泣かせちゃったか。ごめんね、と彼は苦笑いした。

涙を誤魔化すように私は次限の教室へ走った。彼も小走りで後をついてきた。

(ごめんね、ナミちゃん)
(オレだって本当は何も正しくないんだ)
(君に「無理することはない」って言うために、君の正しさを利用までしたのに)
(また君に「好きだ」と言えなかった)

きっとそれは、男として正しくないし、かっこわるい。