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後輩 ページ3

入ってきたのは元気そうな若い女。胸には警察のバッジを付けているので、クラウディの方の知り合いだろう。

 若い女は2本持っていたペットボトルの片方をクラウディに渡した。

「どうぞ」

「あぁ、悪い。ありがとな」

「いえ、いつも先輩にお世話になっているのでこれくらいのことは当然です!」

 若い女をじっと見ていると、急に若い女はこっちを向いたので目が合った。

 ブラウンの目だ。

「あっ! 目が覚めたんですか!」

「んあ?」

「そうだ。ついさっきな、でもまだ安静にしていないと駄目だ」

「そうですか。でも、話はできますよね?」

「まぁ一応喋れるみたいだぞ。なぁ、レイン」

「話せるぞ。ほら、喋ってる。口を開けて、声を出して、意味のある言葉に出来てる」

 急に若い女が真面目な顔になる。

「私はセシリア・ドラウトといいます。目覚めてすぐのところ悪いのですが、今回の件について話を聞かせてもらえませんか?」

 手帳とペンを取り出し、こっちをまっすぐに見て、自分が何かを喋るのを待っているらしい。

「ん? 何が、どうなって、何があったのか教えてくれ。そうじゃないと何も話せない。何が知りたい? 俺が何かしたってのか? なぁ、何の話をしてるんだ?」

「おい、やめとけよ。まだ起きたばっかりなんだぞ。傷口も塞がってないし、また今度にしてやれよ」

「3人も殺されているんですよ! 一刻も早く犯人を逮捕しなければ、もっと被害者が増えるかもしれません!」

「3人……? なんの話だぁ?」

 覚えがない。刺されただけのはずだ。

 家族はあそこにいなかったから、自分と、ムーンと、若い男。これで3人?

 いや、違うな。本当になんの話だ?

「こいつに聞くだけ無駄だと思うぞ。ショックで記憶が飛んでるみたいだしな」

「そんな……」

「……いつものことだ。よく、忘れる。覚えてないことが多い。わからないことも多い」

 女が困ったような顔をする。

「でも、何かしらは思い出せることはあるはずです! どんな些細なことでもいいんです。何か……」

「さっき聞いた名前も思い出せないのに? あんた誰だ? いつからそこに?」

 いつからこの女はいたんだろう? 初めからいた気がしなくもない。

「セシリア。帰るぞ」

 考えていると、わざとらしく大きな音を立ててクラウディが立ち上がった。

「えぇっ! 先輩、でも……」

「いいから。また明日……、明後日にするぞ」

「……分かりました」

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秋瀬 チグ - 僕にもその文才分けて欲しいです・・・!分かりやすく、丁寧で読みごたえがありました。これからも頑張って下さい!コロナに気を付けて。 (2020年12月25日 23時) (レス) id: 4021f55887 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 起こっていることが想像しやすい綺麗で簡潔な文章…見習いたい…そして、続きが凄く気になる!これからどうなっていくのか…無理せず更新頑張ってください! (2020年1月2日 23時) (レス) id: 9fc4b0a5df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年11月5日 21時

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