お話聞かせましょう

６４年前の話 ページ7

あれは、雪の日でした。

　違う？ うーん、あぁ、雪ではなく砂糖が降り積もった日でした。夏には溶けて大騒ぎでしたね。

　外は砂糖で大変なことになっていましたが、中は中で大変でした。

　ある本のページがバラバラになって隠れてしまったのです。

　この世界に一冊しかない貴重な本でしたから皆必死になって探しました。

　おや、知っていますか？ もしかしたら前にも話したかもしれませんね。そう、かくれんぼ好きのあの本です。

　あなたよりずっと古い本です。ですが、あの本はずっと新しいままです。

　性格がそのまま本に出ているんでしょうね。

　子供みたいに元気で、若いということです。

　いつまでも新しいままということと、定期的にかくれんぼをしたがる以外は普通の本です。

　いつもならそのままでどこかに隠れるだけなのですが、この日は何故かページがバラバラになって隠れてしまったんです。

　本と本の隙間、棚の裏、靴の中、排水溝、誰かの財布に隠れたページもいましたね。

　ページがバラバラになって隠れたのは初めてだったので驚きました。

　新しいかくれんぼの方法を見つけたんでしょうね。とても楽しそうでした。

　皆で探して、１日、いや２日かかってやっと全部のページを見つけることができました。とても疲れましたよ。

　見つけたページは１ヶ所に集めたらちゃんと１冊の本に戻りました。

　それから、以前よりかくれんぼの回数は経ったにですが１年に１、２回のペースでページがバラバラになってかくれんぼをするようになってしまいましてね。

　そのかくれんぼの方法が気に入ってしまったようで。探す側はとても大変なので、出来ればやめて欲しいんですがね。

　先週もその本を探すので大変でした。思いもしないところに隠れているので……。

　ん？ 誰かが呼んでいるみたいですよ。

　頼まれ事の途中だったのではないですか？

　あぁ、あの人にですか……。では早く行った方がいいですよ。彼、そういったことには厳しいですから。

　おっと、足元に気を付けて。そこに段差がありますから。

　…………行ってしまいましたね。

　次の話をしましょうか。

　私の体のことが聞きたい？ 分かりました。

　次は３９年前の話です。

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