お話ししよう ページ38
７日目。
ここに来てから１週間が経った。
「さて、何の話をしようか？ ユカ、君とはじっくり話したいと思っていたんだよ。君のことを詳しく教えてもらおうか？ それとも僕のことを話そうか？ それが嫌なら関係ない他の話をしようか」
私の前に座ったスリープさんが言う。
朝起きたら、ベッドのすぐ横にスリープさんが立っていて、そのまま食堂まで連れてこられて、今に至る。
「えっと……」
「まぁ、急に自分のことを話せなんて難しいか、僕も僕のことを話す気分じゃないし、関係ない話をしよう。僕ら以外の奴の話だ。そうだな……、あぁ、昨日調理場の冷凍庫から逃げ出した彼についての話でもしよう」
関係ない話をしよう、その言葉に内心ほっとした。自分のことを話すのが苦手だし、あまり話したくないこととかを聞かれるのが嫌だったから。
どうかこのまま自分のことを話さずにスリープさんとの時間が終わりますように。そうこっそり祈った。
「ユカ、君は彼に会ったか？ 今から１００年程前の古い軍服と装備を身に付けた顔色の悪い、物理的に冷たい男だ」
スリープさんが話そうとしているのはあの軍人みたいな人のことだろうか？ そうだったら昨日確かに会っている。
「会い、ました。私のことを……、ハルって、人と間違えてました。それ以外は、その人のこと、知らないです」
そう言うと、スリープさんは何とも言えない顔をして首をかしげた。
「ハル？ 初めて聞いたな。多分お医者先生も知らないんじゃないかな。以前彼の記録を見させてもらったときにそんな名前どこにもなかったから……。あ、ユカが間違えられたとき、彼は何て言ってた？」
「お前の兄だって、言われました。他には、お父さんやお母さんは、元気に……、してるかって、聞かれました」
「なるほど。名前からして、妹かな？ そうか、まぁ、そうだよな。生まれた時代的にも、たくさん兄弟がいるのが当たり前の時代だし、彼に妹がいてもおかしくないか……」
沈黙。
スリープさんは左手を口元に当てて、右手の人差し指でテーブルを叩きながら何か考えているみたいだった。
「その妹にユカはそっくりだったのか、それとも、認識能力がとんでもなく低下していて、誰でも妹に見えてたか。どっちだろうね」
「私には、分からないです……」
「そうか。とりあえず妹の話は置いておいて彼の話をしよう。彼の名前はソウイチロウ、自分がもう死んでることに気がついていない哀れな奴だ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺぽん(プロフ) - すっごく面白いです！どのキャラも個性的で読むのが楽しい🎶応援してます！ (2022年8月21日 7時) (
レス) @page49 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ペンバタのサブ - 神作だあああああああ！！！応援してます！ (2022年4月11日 15時) (レス) id: a2299a2d24 (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» 投稿しました!(返信不要です) 衛生兵079様の他の作品もいつも拝見させて頂いております...沢山の素敵な作品をありがとうございます💓😭 (2022年2月6日 17時) (レス) id: 267274e32b (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 頭は痛くないさん» 大丈夫ですよ。 (2022年2月6日 16時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» ありがとうございます(TT)描き終えたら私の作品の“デジタルなイラスト集”に載せたいのですが大丈夫でしょうか、もちろん衛生兵079様の作品のキャラクターだということは明記致します (2022年2月6日 14時) (レス) id: 82fde595ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：衛生兵079 | 作成日時：2018年6月9日 16時
