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見えない医者 3 ページ35

1時間くらい診察室にいたと思う。

 ずっと立っているのも辛かったから、隅に置かれていた椅子に座っていた。

 あの後廊下からは何か話し声や物音がしていたけどしばらく前から何も聞こえない。

 何か悪いことになっていないといいけれど……。

 そんなことを考えていると排気口からボタボタと肌色のスライムみたいな物が落ちてくるのが見えた。

 床にべちゃっと広がったスライムはひとりでに動いて見たことがある姿に変わった。

「やぁ、ユカ。僕の名前覚えてるかな?」

「……スラム」

「だぁい正解! 1時間半ぶりくらいかな?」

「あ、えっと」

「先生から伝言だよ。もう大丈夫だから出てってもいいってさ。全部どうにかなったみたいだし」

「そう……。よかった」

 普段から厄介な患者を相手にしているから、こういうことにも対応できてしまうんだろう。

 本当にどうして私はここに来てしまったんだろう……。

 自分では気がついていないだけなのだろうか?

「どうした? そんな顔してさ」

「なんでも、ないよ」

 少し歪な手が差し出された。

「じゃあ行こう。部屋まで送るよ」

「そうだね」

 ここにいる必要は無さそうだ。

 立ち上がってヒンヤリとしてしっとりした手を取る。

 スラムに引かれて廊下に出ると、バリケードはそのままだったけど先生もユキもあの人もいなくなっていた。

「いやぁ、押さえるとこまではよかったんだけど、以外と力が強くてね、逃げられちゃった。アリスは楽しそうだったけどね」

 軽い口調でスラムが言う。

「そう……」

 階段を上がって2階に来たとき不意にスラムが立ち止まった。

「そういえば今日、新しい子が来たらしいね。ユカはもう会ったんでしょ?」

「うん。会った、よ」

「そっかぁ。女の子だった?」

「……女の子、だったよ。スラムより小さい子」

「へぇ、そうなんだ。それは嬉しいね!」

 また歩き出す。

「でも仲良くなれないかもしれないね」

 スラムはぽつりと呟いた。

 どうしてそんなことを言ったのか、その理由はすぐに分かった。

 自分の病室向かって行く途中、階段に一番近い病室の扉が凍りついているのが見えたから。

医者と◇◇→←見えない医者 2



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ぺぽん(プロフ) - すっごく面白いです!どのキャラも個性的で読むのが楽しい🎶応援してます! (2022年8月21日 7時) (レス) @page49 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ペンバタのサブ - 神作だあああああああ!!!応援してます! (2022年4月11日 15時) (レス) id: a2299a2d24 (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» 投稿しました!(返信不要です) 衛生兵079様の他の作品もいつも拝見させて頂いております...沢山の素敵な作品をありがとうございます💓😭 (2022年2月6日 17時) (レス) id: 267274e32b (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 頭は痛くないさん» 大丈夫ですよ。 (2022年2月6日 16時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» ありがとうございます(TT)描き終えたら私の作品の“デジタルなイラスト集”に載せたいのですが大丈夫でしょうか、もちろん衛生兵079様の作品のキャラクターだということは明記致します (2022年2月6日 14時) (レス) id: 82fde595ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年6月9日 16時

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