信号機 ページ5
この世にはいろんな性格の人がいる。物だって例外じゃない。
私の隣に座っている信号機はちょっとめんどくさい性格だけど、悪いやつではない。
「戻らなくていいの？」
「戻らない。あんな交差点なんて！」
「どうしてそんなこと言うの？ 信号機がなかったら皆困っちゃうよ」
「いいんだよ！ どうせボクのことなんて誰も見てないんだから！」
「そんなことないよ。ちゃんと見てるって」
「見てないよ！ 見てたら赤で横断歩道を渡ったりしないよ！ それにあいつら音も聞いてないんだ！」
「音もなの？」
「光と音で教えてるのに見も聞きもしないんだ。ボクよりあのスマホとか言うガラクタの方がいいんだよ！」
「あー、そういう人多いもんねぇ」
「だから戻りたくないんだ！ 戻ってもどうせ誰もボクのことなんか見ない。戻る必要なんかないさ！」
「それでも戻らなきゃダメだよ。あなたやあなたの仲間がいるから皆安全に横断歩道を渡れるんだから」
「ボクを見ない人がいるのが嫌なんだよ！ ボクは見られて、正しい指示を出すために生きてる。ボクを見てボクの指示に従って貰わなくちゃダメなんだ！ それなのに！ あんな！ 薄っぺらな！ ガラクタに！ 負けるなんて！ あんなガラクタよりボクの方が優秀だ！」
「落ち着いてよ」
「落ち着いていられないよ！ ボクを見なかったから事故に遭ったんだぞ！？ ボクを見てればよかったのに！ 馬鹿な奴！ 皆車に轢かれてしまえばいいんだ！ 轢かれた姿を写真に撮って楽しんでればいいんだ！ ノータリンのボンクラどもが！」
「駄目だよ、そんなこと言っちゃ。人が轢かれないようにするのがあなたのお仕事なんでしょ？」
「そうだけど……、正直ボクがやらなくても問題ないよ。ボクがいなくなってもだぁーれも気が付いていないんだからね！」
「でも、あなたを探している人はいるよ」
「どこに？ 誰もボクを見ようとしてないように見えるけど？ 誰も困ってないよ？ 一体誰がボクを探すって言うのさ？」
「……私はここにあなたを探しに来たんだけど」
「え？ 本当に？」
「うん。私が横断歩道を渡るとき、あなたがいないと困るから探しに来た。だってあそこ危ないんだもん」
「ボクのこと見てるの？」
「見てたからいなくなったことに気づけたし、探しにいこうと思ったんだよ。お願い。私のために交差点に戻って」
「…………今回だけ。次は戻らないからね」
「やった。じゃあアイス食べてから帰ろうか」
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ワモテ(プロフ) - この独特な世界観が好きです！ (2022年6月28日 19時) (
レス) @page4 id: d60369b53d (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» やっぱりそうでしたか！ありがとうございます！ (2022年4月12日 21時) (レス) id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» 同じお店です。女性はそのお店の店長さんです。 (2022年4月12日 20時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» あ、あっ…！上手く言い表せないんですけどもう全部好きです((それで思ったんですけど、この話の女性が開いてるお店って道案内に出てきたおじさんが言っていたのと同じですかね？ (2022年4月12日 20時) (レス) @page38 id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» リクエストありがとうございます。風、空ですね、了解しました。 (2022年4月12日 10時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：衛生兵079 | 作成日時：2017年12月25日 23時
