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ずれたあの子 ページ16

はっきり言うと、あの子は変だ。

 何しているの? と聞くと、星を見てるの、と言って眠そうに太陽が眩しい空を見上げる。

 どこに行くの? と聞くと、海の底、と言って微笑みながら電車に乗り込む。

 誰と話してるの? と聞くと、信号機、と言ってスキップしながら横断歩道を渡っていく。

 周りからいつも白い目で見られて、避けられているのに、あの子はいつも楽しそうだった。

 皆あの子をおかしいと言う。妄想を拗らせた痛い子だと、ただの構ってちゃんだと言う人もいる。

 僕も、ずっとそう思っていた。

 あの日、電車から降りたあの子はびしょ濡れだった。

 汗をかいたとか、ちょっと飲み物をこぼしたとかそういうのじゃないくらい、びしょびしょだった。

 ポタポタ地面に水滴をたらしながら、あの子はいつものように楽しそうに笑っていた。

 またおかしなことをしてる、そう思った。そのときに見えたんだ。あの子の隣に変な生き物がいるの。

 そいつは緑色の鳥と虫を足したようなやつだった。大きさはあの子より少し大きいくらいで、背中に小さい羽がいくつも生えていて、足が6本あった。

 普通じゃあり得ない生き物。何度も目をこすったり、頬をつねってみたけど、そいつは確かにそこにいた。

 そいつはあの子と僕以外の他の人には見えていないようだった。

 驚きで動けない僕の横をそいつとあの子は楽しそうにじゃれあいながら行ってしまった。

 その次の日、図書館の隅に一人でいたあの子に聞いたんだ。

 昨日、一緒にいたあれは何? って。

 そうしたらあの子は、よく一緒に遊ぶの、とっても良い子なんだよ、って答えた。

 そこから少し話をした。あの子の生きている世界は僕らと違うらしく、僕らのいる世界と全く違うんだってこと。

 そっちの世界の住人はあっちとこっちを自由に行き来できるけど、こっちの住人は基本的に行くことも、そっちの世界の住人を見ることもできないこと。

 いろいろ話していたらあの子は急に窓を開けて、私もう帰るんだ、そう言って窓から外へ飛び出してしまった。

 そこは4階で、落ちたらただではすまないような高さだった。

 慌てて外を見たけれど、あの子の姿はどこにもなかった。

 それ以来、あの子の姿を見ていない。

 あの変な生き物もあの一回きりで、姿を見ることはなかった。

 あの子にもう一度会ってみたい、今はそう思う。

私と踊りませんか?→←彼は冷蔵庫



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ワモテ(プロフ) - この独特な世界観が好きです! (2022年6月28日 19時) (レス) @page4 id: d60369b53d (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» やっぱりそうでしたか!ありがとうございます! (2022年4月12日 21時) (レス) id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» 同じお店です。女性はそのお店の店長さんです。 (2022年4月12日 20時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» あ、あっ…!上手く言い表せないんですけどもう全部好きです((それで思ったんですけど、この話の女性が開いてるお店って道案内に出てきたおじさんが言っていたのと同じですかね? (2022年4月12日 20時) (レス) @page38 id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» リクエストありがとうございます。風、空ですね、了解しました。 (2022年4月12日 10時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2017年12月25日 23時

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