ヒトゴロシは語る

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というか刑事さんすごいね、地方の昔の事件なのに知ってるんだ。

　あー、地元がそうなの。俺と一緒だ。

　じゃあ、あのでっかい交差点のところにあった雑貨屋分かる？ 赤いブリキの看板掲げてさ、そこの婆さんが……。

　はは、は。

　そうだね、そうだ。

　えっと、まだ2人目か。

　まぁいいか、じっくり時間をかけてゆっくり話すのも楽しいしね。

　……あーっと、メアリはいい女だったよ。

　俺が、23のときかな？

　ほらさっき言った優しい親戚のコネでさ、そこそこいい会社に入れて、そこで働いてたのがメアリだった。

　俺より5、6年上で、美人でさ、人当たりも良くて優しくて、胸がこんなでっかいんだよ。あの頃は俺含めた周りの男ども皆の憧れだったね。

　まあ他の男どもは性的な方での憧れだったみたいだけどさ、俺は、その、……笑わないでくれよ？

　俺はメアリのこと、母ちゃんみたいに思ってた。

　もし、俺の母親がメアリだったなら、ってその頃は本気で思ってたんだよ。

　……気持ち悪いだろ？

　でもさでもさ、そんなふうに思っていても結局、俺自身の手でもってメアリを殺しちまったんだ。

　刑事さんは自分の母親を殺してやりたいって、思ったことあるかい？

　はは、そうだよな。それが普通だよ。

　普通はそう思わない。

　実際俺も本当の母ちゃんも、新しい母ちゃんも好きだったよ。殺してやりたいって思ったことなんてなかった。

　これでも俺、家族のことが大好きなんだ。前のも、今のも。

　もうみんな死んじまったけど、ずっと大切に思ってるし、……愛しているよ。

　血は繋がってなくても、書類上ではちゃんと繋がってる。家族だよ。

　……まぁ、結局さ、どうやったってメアリは俺の母ちゃんにはならないんだよ。

　だって他人だろ。なんの繋がりもない他人。書類の繋がりもない。

　母ちゃんみたいに思っていても家族じゃないから、大切にする必要ないんだよ。

　だから、手にかけた。

　会社での飲み会の帰りだったよ。

　その日は珍しくメアリは右も左も分からなくなるほど酒を飲んでさ、俺に寄りかかって腕を絡ませて離してくれなくて、俺が家まで送っていくことになったんだ。

　他の同僚は持ち帰っちゃえとか、ホテル連れ込めとか言ったり、羨ましがったり、悔しがったりしてた。

　さっきも言ったけど、俺はそういう目でメアリを見てなかったから少し嫌な気持ちになった。

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