病気とは言わないで

あぁ、神様 ページ6

　２日目。

　慣れ親しんだ私の部屋とは全く違う場所で目覚めた。

　ぼんやりとした頭に徐々に昨日の記憶が戻ってくる。そういえば、私はなぜか入院することになってしまったのだ。

　昨日と同じ、ベッドしかないがらんとした病室。濃い消毒液の香り。間違いなく現実だ。

　できれば夢であって欲しかった。仮に夢だったとしても、家から一歩も出ることはないので、あまり変わりはないだろう。

　ふと、窓側のベッドに目をやると、すでにベッドは空になっていた。いや、ちがう。ベッドがあった場所が空になっていた。

　訳がわからず混乱していると、突然病室に大きく元気な声が入ってきた。

「ジャック！ また私の本に手を出したでしょ！ 今日という今日は許さないから！！」

　入ってきたのは、私と同じくらいの背丈の女の人だった。赤い服がよく似合う彼女は、私のことなど眼中になくジャックという人物を怒鳴るが、それらしき人物は見当たらない。

　この病室にあるのは私のベッドぐらいで隠れる場所はない。

「…………？ ジャック？」

　目でも悪いのだろうか？ それともまだ朝早い時間なので寝ぼけているのか？ それとも見えないだけでいるのだろうか？ 赤い服の彼女はぐるぐると病室の中心でジャックという人物を探している。

「ジャック？ ジャック。いないのね。あら？ 貴女は……」

　ふと、赤い服の彼女が私にようやく気がついた。

　

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