病気とは言わないで

入院　３ ページ3

２０１と書かれた病室の前に着いた途端、先程まで黙っていた職員の人は急に元気になり、ここがあなたの病室よ、とだけ言うとさっさと戻っていってしまった。

　さっきの職員の人の話のせいで、不安しかなかった。病室に入るのが怖い。

　でも、部屋の前で突っ立ってる訳にもいかない。意を決して、部屋に入ることにした。

　病室の中には二つのベッドしかなかった。

　テレビや戸棚、仕切りのカーテンなど、本来病室にあるはずのものが、一切無いのだ。あるのは病室の端と端にそれぞれ置かれた二つのベッドのみという病室としては異常な光景だった。

　よく見れば、窓もなかった。窓が本来あるべき場所にはガラスがはまっておらず、外から風が吹き込んでいた。

　窓側のベッドですやすやと寝息をたてているのは、さっき職員の人が話していた子だろうか。頭まですっぽりと布団を被っており、顔を見ることは出来ない。

　同室のこの子が寝ていてよかったかもしれない。人と話すのは苦手なので丁度よかった。

　それに、さっきの職員の話。一緒の部屋の子が居なくなるというのは一体どういうことなのか。もしかしたら、ベッド以外の物もここにあったのかもしれない。それも、ほかの子のように無くなったんじゃないだろうか。ならどうして…………。

　……考えていてもしょうがない。しばらくはここで過ごすことになるのだ。気にするだけ無駄かもしれない。

　もうすでに外は真っ暗で、月が高いところまで登っていた。いつのまにこんなに時間が経っていたのだろうか。

　廊下側のベッドに横になる。ただただ疲れていた。急にまぶたが重くなる。

　難しいことを考えていないで、今は眠って、この疲れを癒そう。

　そして私は眠りについた。

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