・ ページ26
．
＿＿＿
トントン
机を叩く誰かの指が視界に入る。パッと横を見ると見覚えしかない骨張った手。
ああ、もう煩い。
ずっと静まっていた私の心臓は一瞬で跳ね上がる。誰かなんてすぐ分かる。ねえ、どうして……？
「 " イヤホン " 」
久しぶりに目が合ったかと思えばロパクでそう言った。ガンガンに流れてくる音楽を止めてイヤホンを外す。
「音漏れ」
「……すいません」
「下校時刻とっくに過ぎてる」
「……あ、」
携帯を開けば１８：５８。
声を掛けられるまで全く気づかなかった。外の暗さもここからじゃ見えない。
ママ：今日も遅いの〜？
ママ：スタンプを送信しました
１時間前に届いてたママからのメッセージにも気づかず。まともに目なんて見れなくて下を俯けば紫耀くんは図書室の鍵を机に置いた。
「何時までやるつもり？」
「……えっ」
「俺まだ仕事あるから終わったら戸締りして返しに来て」
「……分かりました」
" 早く帰れ " と言われると思ってた。周りにいた生徒は誰一人いなくて、また２人の空間が生まれた。ガラガラとドアを閉めて出て行った紫耀くんの匂いが充満する。いつもなら肩を叩いてくるはずなのに、今日は机だった。直接触れてこないのは、やっぱりそういうことだよね。
私のせいだ。私があんなこと言ったから。変に意識させちゃって、困らせてるだけだ。
でもだったら、どうしてキスなんかしたの？どうしてあんなこと言ったの？ " 知ったら幻滅する " ってなんなの？分からない。何もかも分からない。
ただの優しさなら尚更、 そんなのいらない。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「平野紫耀」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詠夢
| 作成日時：2021年8月10日 17時
