嫌いでもいいよ。【mfmf】 (ページ3)

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僕も兄さんも歌い手だ。

いや、僕に限っては
歌い手"だった"。

声が出なくなってから活動停止。
そりゃあそうだ、本末転倒すぎる。
活動していた期間は1年間。

駆け出しとはいえ、
見事な程ヒットした動画もあり
300万再生を記録出来ていたし
僕的にはもう満足だった。

とても短い期間だったこともあり、
幻の歌い手なんて呼ばれているらしい。

活動停止じゃなくって、
引退にすれば良かったな。

なんてたまに思うが、
Tmitterでたまに喋るし
まふまふの弟として認識されていて、
歌い手の友達だっている。

その友達とTmitterでも会話をするから
復活の期待値が段々上がっている。
はっきり言って復活する気がない。

5年経っても声が出ないのだ。
もう一生出ないに決まっている。

「るーざっ、この音どうかな？」

そう言ってヘッドフォンを僕に装着させて
また後ろから抱きしめる。

僕の座っている場所は、
胡座をかいて椅子と化した兄さんの上だった。

彼が高身長なのもあり、
僕はすっぽりそこに収まり、
シートベルトみたいにお腹に回される
兄さんの腕を受け入れていた。

収まり心地としては抜群なので
僕も僕で身を委ねていた。

僕は、なんでかこの人に溺愛されている。

最初からだ。
二人で住むようになってから
ずっとこんな感じだ。

Tmitterでもとても親しげに話しかけてくるし、
応えないわけにもいかないから返答してるけど
異常なくらいべたべたしてくる。

音を聴き終わり、PCに向かい
僕のために常に開かれているワープロに
「ベース小さいかも」と打ち込んだ。

「あー、メロディ強調したくて......やっぱ聴こえづらいよね。ちょっと抑えてみる」

こくりと頷く。

「あっ、ねえA、この後スマプラしない？」

また頷く。

「やった。あ、その前にご飯かなぁ」

力を抜き切った手を振る。
「どっちでも」という意味だ。

文字で示すのが面倒な時は、
動作で伝えている。兄さんとは
日常茶飯事にこうやって会話している。

「そう？じゃあ、食べてからね。お腹空いちゃった」

もう1度頷いた。OKの意味。

溺愛もだけど、
話せない僕にこうやって
淡々と話しかけてくるのも
不思議だと思ってしまう。

だが今の体勢とか、その辺に関しては
僕もう高校生だしそろそろやめたかったりする。

慣れ切ったし安定性抜群だから
やめるにやめれないし
殆ど癖になってきてるんだけど......。