余命宣告はハッキング出来ますか 2【降谷零/安室透】

93 ページ43

降「寂しいわけないだろ。元から一人暮らしだ」

『はぁ〜、これだから君はぁ〜、ハイスペなのに彼女出来ないの分かるわぁ〜』

降「っ、その話は関係な

『関係大有りです！マジでそういう事女の子に言っちゃダメだよ？どうする？梓さんがしばらくお休みして帰って来た時、"私がいなかった間どうでしたー？"って聞かれたら。"全然大丈夫でしたー！えへへ"とかゼッタイダメ！んまぁ私だから言ってるなら良いけどね？』

降「いいからつまり何が言いたい？寂しいのか寂しくないのか？」

『.........まぁ、全然大丈夫！これくらい平気だよ』

降「........そうか」

『あ！そう言えばさ、病院で起きた時にはあったんだけど忘れて来ちゃった気がするんだよね、おじさんが買ってくれたぬいぐるみ。時間あったらでいいんだけど持ってきてほしいな！』

降「.......分かった」






面会後すぐに戻った車の後部座席からお願いされた物を取り出して、再び窓口にて差し入れ物として提出

ぬいぐるみをあちこち真剣に検査してる成人男性の図を眺めながら、"お預かりします"を合図に帰路へ向かう



今日は夜にまた潜入捜査の任務がある



温かい夕食を食べてるとどうも気分が沈みだし、疲れを癒そうと湯船の湯を溜めようとしてやっぱり止める



.......明らかに嘘だったじゃないか

自分で"全然大丈夫だと言っちゃいけない"と言った直後に、全く同じセリフを
分かりやすく大丈夫じゃない顔で


そう言えば昔萩原が、女の"大丈夫"は大丈夫じゃないだとか言っていた事をふと思い出す





降「はぁ........」

ハ「アゥ.......？」





.......あそこは充実なはずも楽しいはずもない事を重々理解しているからこそ、あんな空元気な様子を見てられない

風呂も入れず不快に感じているはずなのに、切ってやった髪を分かりやすく気に入ってる素振りとか

あれだけオシャレに気を遣って可愛いものが好きだったのに、留置所の厳しい服装制限の元ブラジャーも付けられず上下質素なスウェットのみのバリエーションだとか


.......こんな経験をさせたくて命を救ったわけじゃないのに
かと言ってこうなる事を知らなかったわけでも無い





降「クソっ.........」





いい加減片付けないといけない敷布団を見ては、静か過ぎると思ってしまう自分が嫌になりつつも

その感情が寂しいだとは認めたくない

94→←92

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す