余命宣告はハッキング出来ますか 2【降谷零/安室透】

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降「遅くなったけど、今日は......君のぬいぐるみを持って来たよ」

「..........」

降「..........」





移植から1週間

覚悟をしていなかったわけじゃないが、未だ眠り続け何も話してくれない静けさに何とも思えないはずがない


......あんなにお喋りだったのに
......あんなに食いしん坊だったのに

今じゃ鼻から直接挿入されたチューブで液状を押し込まれているだけ






降「......はぁ......」





適当に受け流していた数々の台詞

"今喋っておかないと"
"またそう呼べるのはいつか分からない"
"次いつ使えるか分からない"

......今となってやっとその意味を噛み砕く



回らない寿司屋に散財されに行けば良かった

伊豆にも連れて行ってやれば良かった

もっとお喋りに付き合ってあげれば良かった

水族館にもっと長く存分に周らせてあげれば良かった

週に2千円と言わずもっと沢山あげれば良かった

そもそももっと仕事をさせてあげれば良かった

メールに返信してあげれば良かった

IoTを見抜いた事ちゃんと褒めてあげれば良かった



考え出せば尽きる事の無い後悔
思いついたらその都度追加していたような"やりたい事リスト"がまるで毒針のように


チェックが付いていないのは

47都道府県制覇
海
スケート
高級ホテルのスイートルームに泊まる
スキー
スノボ
ゲレンデマジックにかかる
恋
花嫁さん
ディープキス
エッ◯
振袖
スポーツ全般


ともう読み上げるのはここまでにするが、運動はこの病気のせいで出来ていなかったんだろう

それを"運動神経悪過ぎる"と僕は........





降「.......そうだ、親が明日帰って来るぞ。久々に会うんだろ？......どうだ？僕は少し緊張してるよ」

「..........」

降「.......寝坊するなよ」

「.........」





.......パソコンを開いて、デスクトップに保存してある日記のページを開いて
読めば辛くなるのは分かってるのに止められず、まだ読めていない日の物を表示させる




"今日は家出した理由を書こうかな。
残り少ない時間を、いつも心配顔の人と一緒に居たくない。
何をするにも"やめた方がいい"って、別に気を付けたって病気は治らないし寿命も変わらないのに。
でも本当は一人も寂しいから、出来るならむしろ雑に扱ってくれる人と一緒に居たい。
その人に迷惑はかけたくないけど。
今日はね、宮内庁のデータにハッキングしたよ。
皇室の秘密を知れて面白かった。
明日はいよいよダークウェブとか見てみようかな"

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