34話 ページ34
イルミは真理が見えないそのゴーグルを力づくで外したい衝動に駆られた。
だが、男がまだ採寸している途中だったことを思い出しやめた。
｢見つけるって何を｣
冷静でありながらも欲求は抑えられず、その答えをキキョウに聞く。声のトーンも抑揚も相変わらずであったが、纏う空気だけが普段とは違った。
本人だけが気づいていなかった。
｢婚約者よ。Aちゃんの｣
イルミはその言葉を聞いた途端、｢ああ｣と納得した。
あと数年で女は結婚できる年齢になるのかと意外にも常識的な答えだった。その反面、Aが誰かと一緒になることが想像できなかった。
いや、できなかったと言うより、したくなかったという方が正しい。
家族でもなんでもないやつがAの隣にいる。
脳内でそのビジョンができる度に、上から真っ黒に塗りつぶされていく。コンピューターのような処理の仕方であったが、僅かに残っていたイルミの人間的な部分がそこにはあった。
｢奥様、オプションはどうなさいますか｣
全身の採寸が完了して男がキキョウに尋ねた。オプションではボタンの数や種類、襟の形、スペアパンツの有無などを選ぶ。
キキョウはそれらを次々と注文するが男はメモをとる様子はない。それに、採寸時もあらゆる部位の測定をしただけで紙やペンを持っていなかった。
いつの間にかメジャーの存在も不確かである。
｢ではまた1週間後にお伺いします｣
深々と礼をした男はそう言って屋敷を去った。
男がキキョウと話している時に、イルミは男の謎を暴こうと凝をして観察した。凝とは練で練ったオーラを目元に集中させ、相手が隠したオーラの流れ すなわち隠を察知する技である。
すると、男の体の周りに白いモヤがかかっていた。
もう少し強く集中してみるとハッキリとした文字と数字が浮かび上がった。
男は念能力者であった。測定値を自身のオーラを利用してメモをしていたのだ。恐らく念で具現化したであろうメジャーは能力のほんの一部だろう。
イルミは最初に感じた男の穏やかな雰囲気と時折見せた笑みが今では不気味に思えた。
男が出ていった後、キキョウは｢何名か候補がいるのよね｣とAの話題に戻り別の写真を取り出した。
イルミは採寸が終わったあともうこの部屋にいる予定はなかったが、柔軟に対応することにした。
キキョウにその婚約者候補という人物を何名か写真と共に紹介された。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています！これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます！おかか様！ (10月8日 9時) (
レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです！ (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです！続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです！頑張ります！更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おかか | 作成日時：2022年1月23日 14時
