29話 ページ29
そして、ビスケはあのブランドの服を脱ぎ捨て、下に元々着ていたであろうカーマイン色のワンピースになった。最初の印象とはガラッと変わったが、Aはなんだかそっちの方がビスケに似合っていると思った。
｢ねえA。あたしの元で鍛えてみない？｣
ビスケは人差し指を突きつけ、自信たっぷりの顔で言い放った。突然の提案にAは驚いた。
ビスケの元でというのはビスケの師匠に一緒に教わるのだと思い、楽しそうでその提案に乗りたかった。
でも、指導者としては既にゴトーがいる。それに家が許してくれるはずがないという考えが過った。
｢なによ。師匠とかいるわけなの？｣
｢あーうん。いるの｣
｢あーもったいない！あたしが磨けばもっと光るってのよさ｣とビスケはひとり叫んでいた。Aはビスケの言っている意味が分からなかったが、誘ってくれたことが少しだけ仲良くなれた気がして嬉しかった。
そして、大通りの方まで戻ってふたりの別れの時がきた。｢じゃあね｣と手を振りそこで終わるはずだったが、Aがビスケを引き止めた。
｢ねえビスケ、私たちまた会える？｣
Aはビスケが自分を利用して近づいたとしても、どんな出会いであっても嬉しかった。またどこかで会って普通に遊んで次の約束をして。今度は友達になりたいと思った。
ビスケは口を少し開き何か言おうとしたが、目尻を下げてふふっと笑うと背を向け歩いて行った。
Aは答えがないその返答を自分なりに解釈した。
無言は肯定。反対の意味は言葉しないと伝わらない。
いつ叶うか分からないがいつか叶うと、Aの今後の楽しみがひとつできた。
｢楽しめたか？｣
｢うん、楽しかった｣
オープンカフェに戻ってきたAは何があったとは言わずに席に着いた。
祖父にというか、祖父につく執事たちにひとり抜け出して誰かと会っていたことが知られたら今後の自由が狭まる恐れがあった。
自分がどれだけお願いしても執事は父親の意向、ゾルディック家の意向に従うのは確実である。
ゼノは手ぶらで帰ってきたAに何かと勘づいていたが、Aが話そうとはしなかったので道中の出来事に対しては目を瞑った。長年の経験から嘘を見破ることは得意だった。まだまだ下手だなと可愛らしい孫を見て微笑んだ。
｢おじいちゃん今日はありがとう｣
Aは嬉しそうな笑を浮かべながら向かえに座る祖父へお礼を言った。少し困ったように眉を下げて笑うのだった。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています！これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます！おかか様！ (10月8日 9時) (
レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです！ (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです！続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです！頑張ります！更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかか | 作成日時：2022年1月23日 14時
