距離感のバグ ページ6
「それで、私と先輩、どっちがAさんにドラム教えましょうか。」
「え、俺がやろうと思ってたけど。」
「あ、じゃあお願いしますね。私は小物戻してきます」
さなさんは持ってきた小物を抱え、とててと扉を出て駆けていった。
「Aさん？ドラムって触ったことある？」
「い、いやっ、無いです全然、」
特に興味なかったので、と要らない一言を言いかけて、飲み込む。危ない。
あー、じゃあ基礎の基礎からかあとぼやきながらゆみは先輩は私にドラムのスティックを渡した。
「これね、こんな風に持って」
手の形を作って、持ち方を教えてくれる。慣れない持ち方にほんの少しだけ苦戦した。
「あ、もうちょっと手の中に空間を開けて」
そう言いながら、スティックを握りしめる私の手を開こうと、ゆみは先輩は手に触れてきた。
「きゃ！」
「えっ」
いきなり手が触れたことに驚いて、ビクッとしてしまう。そんな反応をされたことに少し傷ついた顔をしたのも束の間、我に返って先輩は謝る。
「ごめん、触んない方が良かった？」
「へ……平気、です。私こそごめんなさい……っ」
気を取り直して、今度はドラムの叩き方を教えてくれる。
「これはエイトビートって言って……」
……この先輩、やけに近くないだろうか？距離感が壊れているように感じる。
後ろから覆い被さるように、叩く場所や腕の動かし方を指示してくる。、
あんまり離れると私の手元が見えず、教えずらいのかとも思ったけれど、それにしたって……
もしかして、もしかして下心があるのだろうか？まだ中学生とはいえど男の先輩。女の後輩なんかが居ると、つい食指が動いてしまうのだろうか⁉
逃げるように視線をさ迷わせれば、るなさんが鈴木さんに後ろから飛びかかっていくのが見えた。
特になんのためらいもなく近づいている。私から見れば距離が近く感じるのに、周りのうさだくんやひらめ先輩は何も言わない。
ひらめ先輩に至っては、さらに2人の後ろから襲いかかっている。
このパートは、物理的にも精神的にも、距離が近すぎるんじゃ────⁉⁉
続く
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作者名：俺 x他1人 | 作成日時：2021年2月8日 10時
