これこそパーカッション ページ3
妙に空気が緩い人たちを目の前に、私は唖然とする。
(え、何……強豪じゃなかったの?この人たち……打楽器の人達だけゆるゆるじゃない?)
助けを求めるように副部長の方をちらりと除けば、副部長は可愛い顔をしかめて、大きなため息をついていた。
「もーっ、サボるなって言ったでしょ!ゆみは先輩とさなちゃんはまだしも他は何してたの!遊んでたの?!」
「いや違うっ、違うよふくぶ……別にプラモ作ってたわけじゃないし!俺練習してたし。」
「私はTwitter見てた」
「プリクラ眺めてた♡」
「本読んでた」
「お前ら〜!うさだくんはまずちゃんと敬語使いなさいっ!!あと、るなはスマホを持ってくるんじゃない!!」
ぷりぷりと怒る副部長を横目に、私は打楽器の部屋もとい第2音楽室を見回す。
普段は授業に使われているからか机と椅子が沢山あり、それらは教室の隅の方に追いやられて広くスペースが出来ていた。
練習のために楽器を出したは言いものの、そのまま放置してあるように見える。
ゆみはと呼ばれた先輩と、さなと呼ばれた1年生は楽器のそばに居て、真面目に練習していたらしいが……
(ああそっか……このパート、そんな感じなんだ。遊んじゃう感じの。)
へらへらと笑いながら、サボっていた内の1人の女の子がこっちを見た。
「体験でしょ?たいけん!案内しなきゃ。ねーほら鈴木!ひらめ!しょた〜ん!!」
楽しそうに手を叩く。何だかちっちゃい子みたいな子だ。実際に、横にいる副部長並に背は小さい。
「ショタンって呼ぶのやめろって言ったじゃん。」
「怒るなよショタン」
「そうだよ」
変な呼ばれ方をした眼鏡の男の子が、イライラした顔で本から顔を上げる。
そんな男の子に茶々を入れる天然パーマの男の子。便乗して女の子の方もさらににこにこ笑った。
「え、ほんとに体験?パーカスに?」
「本当ですよゆみは先輩。じゃあAちゃんのこと、よろしくお願いします〜!30分したら迎えに来ます!」
え゛、と野太い声が出てしまう。30分もこの空間に?!
不安しか無かった。ノリがおかしかったりサボっていたり、よく分からない人達の中に置いていかれるのは精神的にキツい……
1人にされたくなくて、泣きそうな顔で副部長を見てみる。
副部長は、強く生きろよ〜、とだけ言って、出ていってしまった。そんな……。
わちゃわちゃと騒ぎ出したパーカッションパートに、私は放り込まれてしまった。
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作者名:俺 x他1人 | 作成日時:2021年2月8日 10時