三十 ページ31
・
「私の子…だと」
『はい。聞こえるでしょう、僅かな心音が。』
「……あぁ、こんなことがあるのか」
落ち着きを取り戻した無惨さんは表情を和らげ、私のお腹を優しく撫でた。
「人間と鬼の成長は違う。半々が混ざりあったものは、どうなるのか分からない。どちらにせよ、お前には負担が大きすぎる。」
『堕ろせ、ということですか。』
「そうじゃない。私はお前が居なくなることは許していない。どちらかの命を取れと言われれば、有無を言わさず子を殺す。」
『……わかりました。』
「この話はもういい。そして暫くは外には出れないと思え。これはお前が冒した失態だからな。」
ここは大人しく身を引こう。
何とか怒りは沈められたし、最善策だと思う。
そして、無惨さんが私に対する執着度が知れてよかった。まさかこんなにもとは思っていなかったけれど。
でも、ある意味これを利用すれば、かなりの打撃を与えられるだろう。
使えるものは使わなくては。
最後の切り札は炭治郎に託す。
・
外出禁止令が出てから1ヶ月。
私は事細かにここでの出来事を書き留めていた。
黒死牟さんが刀を振っていたこと。童磨さんが私に「もうすぐだね」と言ってきたこと。無惨さんが過保護気味になってきたこと。
上弦の鬼が減ったこと。
彼らは着実に近ずいて来ている。
もう時期、ここへ来るのだろう。
以前よりも脹れたお腹を擦った。
書き途中の遺書に涙が落ち、紙がよれた。
怖いという感情が渦巻いて、心が折れそうになる。でも、
「どうしたA、なぜ泣いている。痛むのか。」
『…ッ違います……、ごめんなさい、』
「…謝罪されても分からない。」
生命を感じない温度に縋るのも、これが最後になるのだろうか。
認めたくはなかったけれど、この短い人生で芽生えつつあった感情を消し去るように涙を流した。
私が泣くのはこれが最後ですよ。しっかり覚えてて下さいね、無惨さん。
そして、その時がきたら、私の存在が貴方の毒となりますように。
貴方が永遠に悔やみますように。
・
1584人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
入間(プロフ) - たくあんさん» 非常早いコメントで笑 ありがとうございます! (2020年4月27日 15時) (レス) id: faea9d84a4 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - 完結おめでとうございますゥ(´;ω;`) (2020年4月27日 15時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ありがとうございます!! (2020年1月19日 18時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
入間(プロフ) - えむさん» 初めまして。ありがとうございます!出来れば更新をもっと増やして行けたらなと思います! (2020年1月19日 17時) (レス) id: faea9d84a4 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして、突然すみませんこのお花とても面白くて大好きです!また宜しければ更新楽しみにしています! (2020年1月18日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:入間 x他1人 | 作成日時:2019年10月26日 23時