嫌よ嫌よも嫌のうち（青） (ページ3)

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「いい感じです!次は3人ずつに分かれて撮りますんで最初は、」

「……はあ、」

ため息ぐらいつきたくもなる、例え今が仕事中だとしても。
さっき渡辺さんに『太った？』って言われたことが気がかりというか、うん。
ここ最近過剰に糖分を摂取していたから、……心当たりしかないのだ。
それを渡辺さんに指摘されたことで、余計に腹が立ってしまう。
相手が彼じゃなければ、素直に受け入れられたんだろうか。

例えば撮影真っ只中の彼の右隣にいる佐久間さん。
そもそもそんなデリカシーのないこと言わなさそうだし。
それか左隣にいる深澤さん。
彼は逆に、『俺は好きだよ』みたいなこと言ってきそうで危ないかな。

「……ん？」

そんな意味もないことをもやもや考えながら撮影を見ていると、真ん中から感じる憎たらしい目線。
……デリカシーのないことを言ったのを気にしてたり？

“ みず ”

まあ、彼はそんなたまじゃない。
口パクで伝えられたその2文字に腹が立とうとも、これがマネジメントというやつ。

逆にこんなにむかつくのが相手でも業務を遂行する私って、めちゃくちゃ出来たマネージャーなんじゃないか？

「なんてね……」

馬鹿みたいな考えをかき消すみたいに、自販機の中からペットボトルの落ちる音。
渡辺翔太という人間はわがままでありつつも、優しい人間だ。
それは身近で見ていればわかる、彼は優しい。

だから、あれもこれも私に原因があるんじゃないかと心のどこかで思っている。

……イライラしちゃだめだな、とりあえず。
そう、5歳児みたいにイヤイヤ言っていてはだめだ。

「……あ」

そんなことを考えていたら、自分の分を買い間違えてしまった。
音を立てて落ちてきたのはブラックコーヒー、ブラックというだけに砂糖は入っていない。

でも、……いっか。
渡辺さんに太ったって言われたし、イライラしないのと同じくらい糖質制限も大事！うん。