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電話を切った彼は大きくはぁーーーとため息を吐くと、面倒くさそうにダッシュボードにスマホを投げ捨てた。
そのままハンドルに突っ伏してしまった。
………き、気まずい…
勝手に協力?させられたとはいえ、無関係って訳では無い。
写真にも堂々と載ってしまったし、大元のツイート主は新たなツイートに「カノジョとこれからデート宣言(嘘)」をした時の動画までご丁寧に載せている。
…SNS怖すぎ…
まさか自分がこんなこと身を持って経験することになるとは…
迷惑かけない、と言われた手前それを鵜呑みにしてここで「じゃあ、お疲れ様です頑張って」なんてバカ無責任なことも、出来ない。
どうしたものか、と小さく息を吐いて隣の彼をちらりと見るとまだハンドルに突っ伏している。
相当頭を悩ましているのだろう。ご愁傷さまだ。
「……なぁ、」
じっと見つめていた彼が当然口を開き思わず肩をビクリと揺らす。
まさか、声掛けられるとは思ってなかった…
『は、はい…』
掛けられた声は想像以上に重々しくつい背中をぴしんと伸ばしてしまった。
「あんた、彼氏は?」
『え、あ、いない、ですけど…』
数時間前に別れました☆
なんて、冗談でも言える雰囲気じゃない。(いや、冗談でもなんでもなく事実なんだけどね)
私の言葉を聞いた彼はスっと顔を上げてニヤリと笑った。
あ、これ絶対悪いこと考えてるじゃん。
「取引しようじゃねぇか」
『と、取引、ですか…』
そして今、私は、とてつもなく大きなマンションの前に立っている。
「A頼んだぞ」
『……はい』
「声小さい!」
『はいっ!』
エレベーターで登り、該当の階に着くと隣の彼、としみつくんに手を握られた。
「こっからお前は、俺のカノジョ、だからな」
それだけ言うと目の前の扉を開けた。
「としみつおはよー、こないだ大変だっ…え?」
「あ?」
「は?」
「おはよ」
「あ、え、隣の子、誰?」
「あぁ、俺の『カノジョ』」
「「「………ええっ!?」」」
目の前にいた眼鏡をかけた小さい人と、長身の人と、オレンジの派手な髪の毛をした3人は大きな声を上げた。
『は、初めまして…Aと申します…としみつくんとお付き合いさせて頂いてます…』
「っつーことだから!」
そう言って彼は私の肩を抱き寄せた。
ここから、私と彼の奇妙な恋人生活が始まったのだ…
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あじぽん〜(プロフ) - ふぁっ...設定がもう好きです。これから頑張ってください! (2020年7月26日 13時) (レス) id: 274279f3c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨウ | 作成日時:2019年9月24日 16時