6日目 ページ14
8月30日
目が覚めると俺はリビングの床に寝転がっていた。
俺の体には、タオルが掛けられていて多分Aが気を使って掛けてくれたものだと思う。
ゆっくりと伸びをして時計を見ると朝10時だった。
結構寝てたんだな。
今日は特に予定も何も無い。
急がなければならない編集もない。
Aを何処かに連れてってやるか、そう考えた時だった。
手元に置いていたスマホが震える。
LINEの通知を告げるものだった。
ざわくんてつやごめん。今日明日時間ある?
ざわくんからだ。
話を聞くと、企画のことで話し合いたいことがあるらしい。
丁度暇だったし、Aとの予定を考えていたけれど仕事には変えられない。
ひとつ返事でOKをして出掛ける準備をする。
『てっちゃん、お出掛け？』
「あ、うん。今日明日仕事入っちゃって」
『あし、たも…？』
「うんごめん、家空けること多くなるけど…』
『……』
「落ち着いたらまたどっか連れてってやるからさ」
『てっちゃん…』
そう俺の名前を呼ぶAの表情は浮かない。
『おまつり、いきたい』
「まつり？」
『うん、今日と明日、やってるの』
「……」
『さっき、てれびで、みた』
「A…」
『おまつり、いきたい』
「A、今日と明日は仕事になったって」
『てっちゃん、』
「なぁ、」
『お願い、』
「仕事だって言ってるんだろ。分かってよ」
俺の方に伸びていた手がピタッと止まる。
悲しげに下がっていた目は、大きく見開かれたまま動かない。
「俺ももう自分の時間自由に使える子供じゃないんだよ。もう大人なの。それくらい、分かるでしょ？」
つい大声を出してしまった。
こんなこと言う時点で、本当の所大人じゃないのかもしれない。
それでも、今までは俺に従順だったAが初めて見せた抵抗に苛立ちを覚えたのと事実だった。
この時点で俺は、目の前の彼女をまだ人間として認めた訳じゃなく、まだ金魚として見ていたのかもしれない。
するりと下に落ちた手はギュッとそのグラデーションの綺麗なスカートを握った。
『ごめん、なさい』
「……落ち着いたら、何処へでも連れてくから。今だけは我慢してくれ」
それだけ言い残して、Aの顔も見ないまま家を出る。
背中越しに呟いたAの声を、そんな俺が聞くはずもない。
『明日じゃなきゃ、もう、遅いんだよ…』
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えみ - 話が美し過ぎた… (2020年7月20日 3時) (
レス) id: 4b46f7439f (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *ameto*さん» ありがとうございます！曲とともに見て頂けて嬉しいです。イメージ通りのお話になっていたでしょうか？是非また他のお話も見て下さると嬉しいです！ありがとうございました！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！今回は今までの橙さんとは違った雰囲気のお話だったので、不安でしたがそう言って貰えて嬉しいです！でもやっぱりラブラブなお話が書きたくなるので、また次の橙さんに期待していて下さい！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
*ameto*(プロフ) - 完結おめでとうございます。こうなるとわかっていても避けられない、2人の運命にうるっと来ました…。神曲を教えてくださって、こんなに素晴らしい作品を読ませていただいて、本当にありがとうございました！ (2019年9月3日 0時) (レス) id: 7b77494f9e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！執筆お疲れ様でした！毎度のことながら、素敵なお話をありがとうございます！ヨウさんの書く橙さんが大好きです！心がギュってなって、きゅんってなって。次回作も楽しみに待ってます！また橙さんをお願いします！！！ (2019年9月2日 18時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨウ
| 作成日時：2019年8月27日 11時
