5日目 ページ12
8月29日
気付けば少しずつ空が明るくなっていた。
いつの間にか眠ってしまっていたみたいで、隣を見るとAがじっと前を見据えている。
ずっとこの小さい体に身を預けてしまっていたようだ。
もぞもぞと体制を変えると、Aが俺の方を向いた。
『てっちゃん、おはよう』
「……おはよ、ごめん、重かったよな」
『全然平気だよ』
そっと凭れていた体を離し、グッと身体をほぐすように伸びをする。
時刻は5時ちょっとすぎ。
そろそろ日の出だ。
『てっちゃん、見て』
そう指差すほうを見ると、水平線から少しずつ太陽が登り始める。
水面に光が当たって、キラキラと輝く海は、今まで見た何よりも美しい。
『きれいだね』
「…そうだな」
そのままずっとお互い何も言わず、太陽が登りきるのを見つめていた。
『てっちゃん、』
呼ばれたままAに顔を向けると、Aはずっと前を見続けていて。
『Aは、てっちゃんのそばにいるよ。今までも、これからも』
「…ありがとう」
Aの手をぎゅっと握りしめる。
奇妙な関係だけど、お互いなくてはならない存在で。
今更手放すことなんてできない。
でもこの手の中にある温もりが消えない限り、今はこの時を大事にしたい。
朝日に照らされたAの顔を見つめると、また輪郭が曖昧に揺らめいた気がした。
海に呼ばれているのか、それとも光で目が眩んだのか。
分からないけど、残念ながら手放す気は無いんだ。
「そろそろ帰るか」
そう言って立ちあがるとAも満足したようで、素直に俺の手を取って立ち上がった。
『てっちゃん、ありがとう。お外楽しかった』
「そりゃよかった」
『A今度は泳ぎに来たいなぁ…』
「そうだな、次は昼から遊びに来るか」
『えへぇ、楽しみ！約束だよ！てっちゃん！』
防波堤を肩を並べて歩く。
彼女はサンダルを片足流されてしまったので、傷つかない様にゆっくりと。
朝日に照らされた俺達の影は、俺達の進む方へと大きく伸びていた。
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えみ - 話が美し過ぎた… (2020年7月20日 3時) (
レス) id: 4b46f7439f (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *ameto*さん» ありがとうございます！曲とともに見て頂けて嬉しいです。イメージ通りのお話になっていたでしょうか？是非また他のお話も見て下さると嬉しいです！ありがとうございました！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！今回は今までの橙さんとは違った雰囲気のお話だったので、不安でしたがそう言って貰えて嬉しいです！でもやっぱりラブラブなお話が書きたくなるので、また次の橙さんに期待していて下さい！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
*ameto*(プロフ) - 完結おめでとうございます。こうなるとわかっていても避けられない、2人の運命にうるっと来ました…。神曲を教えてくださって、こんなに素晴らしい作品を読ませていただいて、本当にありがとうございました！ (2019年9月3日 0時) (レス) id: 7b77494f9e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！執筆お疲れ様でした！毎度のことながら、素敵なお話をありがとうございます！ヨウさんの書く橙さんが大好きです！心がギュってなって、きゅんってなって。次回作も楽しみに待ってます！また橙さんをお願いします！！！ (2019年9月2日 18時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨウ
| 作成日時：2019年8月27日 11時
