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彼女を慌てて受け止めるが、安否の確認なんて、できるほど、余裕なんてなかった。
止めようとしても、無理矢理理解しようとする思考に、心情が追いつかない。
私の為、雪菜も言ってた言葉。
その言葉が、今の私には重くのしかかり、速度を上げるように、思考を掻き乱す。


『私の為ってどういうことなの、私は、何に脅かされてるの…?彼女達が身を挺してまで守らなきゃいけないほどの脅威…いや、でも、私に危害を加えようとしてる人間なんて千里さんくらいで…千里さんが私にとって、そこまでの…?』


朦朧とする意識で、口に出して整理しようにも、もう限界だった。
霞む視界の中、やばい、と思っても、意識を保つことはできず、ぐらりと傾いた部屋。


「だから焦っちゃ駄目だって言ったじゃん」

『っ…!』

「あーあ、もう限界だって、顔に出てるよ」

『…どうして、貴方が…』

「規則違反があったからね、設定し直しに来たんだよ」


背中に伝わる熱。
支えられて、上から、ぴくとさんが話しかけてくる。
…女性の部屋に無断で入るのは、あまり…。
と思ったが、よく見れば、周りは闇一色。
認識できるのは、ぴくとさんと、私と、橙色の彼女。
そして、彼の手から暖かく放つ優しい光。


『…なに、して…』

「記憶を消してるの、全く、この子もおしゃべりだよね、僕と一緒」

『…記憶を…?』

「僕以外がこの世界のことについて誰かに話すのも、聞かれるのも、れっきとした規則違反、だから、君の中からも、この記憶を消す」


険しい顔をして寝ていた彼女は、段々と柔らかい表情になった。
そして、その光が私に向けられる。
…駄目だ、忘れちゃ駄目だ。
ほんの少しの記憶でも、私にとって、何よりも大切なものなのだから。
私のせいで苦しむ彼女達を救う、唯一の方法なのだ。


『や、めて…消さないで…』

「わがまま言わないでよ、巻き込まれた身なのはわかるけど、規則違反は君もなんだから」

『…嫌よ、忘れたくないの…お願い、消さないで…』

「っ…泣かないでよ、僕が悪いことしてるみたいじゃんか」


困ったように顔を顰めて、溢れる涙を掬うように拭ってくれた。
一つため息をついて、しばらく考えた後、嬉しそうに言った。


「君は本当に友情をとるんだね、いつだってそう、友達思いなのは良いことだけど、それが身を滅ぼすことも忘れないでね」


それはもう、堪えられないとでもいうかのような、邪悪な笑みだった。

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五千時(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます!凄く嬉しいです!励みになります〜!更新頑張ります!! (2020年4月16日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - このお話最高です!推理要素もあってとても楽しめます。今ある話まで一気読みしちゃいました笑更新頑張ってください!! (2020年4月16日 18時) (レス) id: abc489c33a (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - Black Aliceさん» コメントありがとうございます!夢主以外の視点も書きます!近々その話が出ると思いますのでお待ち下さい! (2020年4月13日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
Black Alice(プロフ) - とても面白い小説に巡り会えたと心から思える程、面白かったです!1つ質問なのですが、夢主以外の視点は書いたりしますか? (2020年4月13日 18時) (レス) id: 10501c80b3 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - ゆうさん» コメントありがとうございます!いやぁぴくとさん黒幕で使うの夢だった…!更新頑張ります! (2020年4月12日 22時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:五千時 | 作成日時:2020年3月30日 22時

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