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新横浜駅を発車する頃には、適当に選んだおにぎりはすっかりお腹の中におさまっていて、
もう手持ち無沙汰になりつつも、しかしそこはもう慣れたもの。
まだ2時間と少し残されている乗車時間の過ごし方も、定番化したものだ。
先週末に用意しておいた小説を鞄から出して、耳にはイヤホンを突っ込み、お気に入りの音楽と共に本の世界に没頭する。
と、その前に、もう一度開いたトーク画面。
さっき送ったメッセージは、まだ既読が付いていないことを確認して、また閉じた。
そうして、もう余計なことは考えないように、ページを開いた。
初めて彼に逢いに新大阪駅行きの新幹線に乗ったのは、引っ越しの1週間後だった。
指定された改札口を出れば、柱にもたれて待ち構えてくれていた彼の姿が見えて、
同じタイミングであたしに気付いた彼が、少しぎこちなく、だけど、フッと口元を緩めて笑った顔に、
まだ付き合い出す前の、初めて二人で待ち合わせをした日のことを思い出した。
それから少し早足で彼の元まで辿り着いたあたしに、
「よぉ来たな。」
やっぱり少しぎこちなく微笑んで、ぐしゃぐしゃっと雑にあたしの頭を撫でた。
親戚のおじちゃんみたい。
そう思いながら、急に胸の奥がギュッと握り潰されたみたいに苦しくなって、
鼻の奥にツンと痛みを感じた。
そうして気付いた。
あぁ、不安だったんだ。
ここにあたしの居場所があるのか。
彼があたしを待っていてくれているのか。
二時間半、高速で流れて行く見慣れない景色を眺めながら、
ずっと不安だったんだ、と。
「ーー迎えに来てくれて、ありがとう…」
悟られないように絞り出した言葉は、少し震えていたから、
どうした?と彼が眉を寄せて、その少し情けない顔を見たらますます何だか泣けてきそうになって、
「お腹空いたから、早くいこっ
やっぱりまずはベタに粉もんが食べたいなあ。」
顔を見られないようにあなたの隣に並んで、無理矢理、呑気な声を上げた。
「ーーおぉ、うまい店連れてったるわ。」
いつも通りに返してくれた彼だったけれど、
普段は手を繋ぐのも腕を組むのも嫌がるくせに、あたしがそっと腕に添えた手を振り解かなかったのは、
きっとあたしの気持ちに気付いてくれていたのだろう。
そのまま少し歩きにくそうに、
だけどあたしの手が離れないように、いつもよりも速度を落として並んで歩いてくれた。
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まめまめた(プロフ) - まゆまゆさん» まゆまゆさん☆せっかくリクエストいただいたのに随分遅くなってしまってすみません(;´д`)読んでいただけてヨカッタ〜( ´∀`) (2020年5月31日 11時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - リクエストにお応えしてくれてありがとうございました。此方に感想失礼します。読みました。とてもお話が面白くてお二人の様子が可愛らしくてお話の中だけど幸せになって欲しいと思ってしまいました。これからも頑張ってくださいね。 (2020年5月30日 1時) (レス) id: 381d27e867 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - 美波さん» 美波さん☆コメントありがとうございます!幸福論はいつもとテイストが違いシリアス強めな作品ですが、私自身も気に入っているお話なので、大好きを頂けてとっても嬉しいです( ´∀`) (2020年5月22日 10時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - まゆまゆさん» まゆまゆさん☆お返事遅くなってすみません(>人<;)横山君のお話、実は私も書きたかったのですが、もう話数がいっぱいでアップ出来ず…かと言って別の短編集に突っ込むのもいきなり過ぎるし…と困っております(;´д`)どこかに置き場が出来たら書いてみますね! (2020年5月22日 10時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - 初めまして。いつも作者さんの作品たくさん読ませていただいてたのですが、初めてコメントします!好きなお話沢山あるんですけど、このコトノハの幸福論が本当に大好きで何回も読み直してて、伝えずにはいられなくなりコメントさせてもらいました^ ^ (2020年5月22日 2時) (レス) id: 2630bc6126 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめまめた | 作成日時:2019年12月14日 17時