・ ページ8
「もうええって言うてるやろっ」
２週間前、いつものように忠義から眠れないと我儘を言われ、のこのこと彼の家まで出張抱き枕サービスに向かっていたところ。
聞き慣れたはずの声が、聞き慣れない程苛立ちを含んだ響きで聞こえてきて、思わず足を止めれば、
進行方向の少し先、まさに目的地である忠義のマンションのエントランスに彼の姿を見つけた。
だけど、彼の腕に縋るように、見慣れない女の子が立っていて、
さっきの苛立った声が彼女に向けられたものだと分かった。
「本当に誤解なのっ！
あの人とは何にもなかったし、あたしにはたぁくんしかいないの…たぁくんが一番なの…
ね、もう一回ちゃんと話し合おうよ…？」
必死に訴えかけるその彼女の声は、可愛らしく鼻にかかっていて、
それが地声なのか泣いているせいなのかは分からないけれど、綺麗にビブラートがかかっていた。
(いやいや、��一番��とか言っちゃってる時点で、二番もいるの確定じゃん。)
なんて捻くれたツッコミはさて置き、
遠目でも忠義好みの華奢で可愛らしい感じの子だと分かった。
「ーー今更言われたって、俺には関係ないよ。
俺たちはもう終わったんやから。
ここにももう二度と来んどいてな。」
忠義の表情は見えなかったけれど、感情を押し殺したような、抑えた低い声でそう告げると、
まだ腕に掛かっていた彼女の手を振り払ってエントランスの奥へ消えて行った。
彼女はしばらくそこに立ち尽くしていたが、遠くからあたしの視線を感じたのか、
俯いていた顔を上げ、
それから早足で歩き出してあたしの横をすり抜けて行った。
もう暗い夜道で、街路灯に照らされて僅かに見えた彼女の顔はやっぱり涙に濡れていて、
だけどその表情には、悲しみよりも悔しさを色濃く感じた。
そしてやっぱり、唇を噛んで涙に濡れていても、忠義好みの可愛らしい顔立ちをしていた。
きっと、彼女は忠義の元カノで、ヨリを戻したくて会いに来たのだろう。
だけど、忠義はそれを受け入れなかった。
あたしが目撃してしまった二人のやり取りから分かるのは、その程度のことだけで、
彼らの間に何があって、何故別れたのかなんて知らないし、
知りたくもなかった。
ただ、忠義が眠れなくなった理由は彼女なのかな、と何となく思った。
そして、忠義があたしを抱き枕に選んだのはきっと、
あの夜のあたしがちょうど、彼と同じような寂しさや憤りを抱えていたから、なのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1309人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まめまめた(プロフ) - 渡璃凛さん» 渡璃凛さん☆はじめまして！コメントありがとうございます！文才なんて恐れ多いっ( ；´Д｀)誤字脱字だらけののろのろ更新ですが、引き続きよろしくお願いします(^^) (2020年9月9日 13時) (
レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
渡璃凛(プロフ) - 初めまして！更新めっちゃ嬉しいです！その文才本当にリスペクトしております、、！更新頑張ってください！！ (2020年9月5日 14時) (レス) id: d9624783f4 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆パワーワード笑確かに！笑 (2020年7月13日 12時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - こんにちはm(_ _)m「章ちゃんの相方ちゃん」…なんてパワーワード…呼ばれたい…(ストーリーの主旨と離れててすみません) (2020年7月5日 22時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - あーばるさん» あーばるさん☆コメントありがとうございます！他の作品も読んでいただいているとは、有り難し( ´∀｀)今のところ丸山さん出番少ないですが、ここから出番が増えますので、お楽しみいただけるようがんばります！ (2020年7月5日 19時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめまめた
| 作成日時：2020年1月28日 14時
