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「っ、…っふ、、っ…」


溢れ出した涙も、噛み殺せない嗚咽も、もうあたしの手には負えなくて、

せめてこのぐちゃぐちゃに歪んでいるであろう醜い顔を隠そうと布団に顔を埋めて、

水分も嗚咽も吸収させてしまいたかったのに…



「そんななるまで我慢してどうすんねん、、

ーーほんま、阿呆やな…」


耳元で響くむず痒い程優しい声。


これでもかと言うほど熱を持った頬が、少しひんやりとした感触を覚えて、

それが彼の温度だと気付いた時には、

あたしの涙と鼻水と嗚咽は、彼の着ている肌触りの良いスエットに吸収されていた。



ますます制御不能になった感情はあたしから、

建前とか理性とかプライドとか

そういうものを全部奪い去った。



ぎゅーっと、

子供みたいに彼の背中にしがみついた。


顔を擦り付けるように、彼の胸に縋った。


涙を止めることも嗚咽を我慢することも放棄して、

思いっきり泣いた。



「っ、ふっ…ずっ、、っ、、ん…」



そうして、自分の嗚咽やら鼻を啜る音と、彼の心臓の鼓動だけが、

しばらくの間あたしの世界を支配していた。









泣き疲れて涙が止まった頃には、もう全ての体力を使い果たしていて、

力なく彼にもたれ掛かりながら、半分意識を手放し掛けていた。


あたしを抱き締めていた彼の腕が緩んで、また手のひらで背中を支えるようにしてから、離れていった体温。


「横になるか?」


あたしの顔を覗き込んでそう言った後、そのぐちゃぐちゃさに驚いたのか、

また困ったように眉と目尻を下げて、


「その前に、顔拭くか。」


そう言って、ティッシュであたしの目元をポンポンと押さえた後、

そのまま鼻にティッシュを押し当てて、


「ほれ、チーンせぇや。」


まるでお母さんみたいに鼻をかませてくれた。



その全てが優しすぎて、息が出来ないほどだった。




それからもう一度、


「よし。
ほな、横になり?」


そう言ってあたしの体をゆっくりとベッドに沈めてくれた。



半分くらいモヤがかかり出した意識の中、彼が優しくあたしの髪の毛を指で梳くのを感じた。



そして、


(ーーここに、いて…どこにも行かないで…)



心を占める今世紀最大級の我儘を、

口に出さずに留め置けたのかどうか分からないまま、

重たい目蓋は降りていった。

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まめまめた(プロフ) - 渡璃凛さん» 渡璃凛さん☆はじめまして!コメントありがとうございます!文才なんて恐れ多いっ( ;´Д`)誤字脱字だらけののろのろ更新ですが、引き続きよろしくお願いします(^^) (2020年9月9日 13時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
渡璃凛(プロフ) - 初めまして!更新めっちゃ嬉しいです!その文才本当にリスペクトしております、、!更新頑張ってください!! (2020年9月5日 14時) (レス) id: d9624783f4 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆パワーワード笑確かに!笑 (2020年7月13日 12時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - こんにちはm(_ _)m「章ちゃんの相方ちゃん」…なんてパワーワード…呼ばれたい…(ストーリーの主旨と離れててすみません) (2020年7月5日 22時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - あーばるさん» あーばるさん☆コメントありがとうございます!他の作品も読んでいただいているとは、有り難し( ´∀`)今のところ丸山さん出番少ないですが、ここから出番が増えますので、お楽しみいただけるようがんばります! (2020年7月5日 19時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まめまめた | 作成日時:2020年1月28日 14時

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