眠れない夜に必要なもの（∞）

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纏まらない思考を持て余しているうちに、いつの間にか本格的に眠っていたようで、

目を覚ますと体の怠さは幾分マシになっていたが、もう外は陽が落ちていた。


ベッドの脇のテーブルに買い物袋が置かれていて、マキがまた様子を見に来てくれたことが分かった。


キッチンの方で音がして、


「ーーマキ…？」


ベッドから体を起こし、少し開いたままのドアの向こうに問い掛ければ、


「あ、起きた？イチゴ買ってきたけど、食べれる？」


イチゴのパックを手にしたマキが入って来た。


「たべる。美味しそう…」


真っ赤に色付いた大粒のイチゴに、消え失せていた食欲が刺激された。


「ん、洗ってくるから待ってて。」


そう言ってまた戻って行ったキッチンから、イチゴを洗う水音に合わせて、


「で、信五さんとはちゃんと話したの？」


と少し大きめ問い掛けが飛んできた。


その言葉に慌ててスマホを確認したが、彼からの着信は無かった。


まだ仕事中なのだろう。


「ーーまだ…

今はちゃんと話せそうにないから、もう少し体調が良くなってから、ちゃんと説明するつもり…」


小さく答えれば、イチゴを持って戻って来たマキは、


「余裕無くて本音曝け出しちゃうのが嫌だから、今は話せない、ってこと？

そんな繕って付き合ってて、お姉ちゃん幸せなの？
無理して、我慢して一緒にいたって意味なくない？」


少し怒った顔をしてそう言った。


それは実に正しい意見。


ーーうん、お姉ちゃんだってそんな事は分かっているよ…



その真っ直ぐさを羨ましく思いつつ、若さだよな…なんて少し斜めに見てしまう。

いや、違うか。

年齢じゃないよね、きっと。


単にあたしに意気地がないだけ。

向き合う勇気を持っていないだけ、か…




「本音曝け出せないって、結局は相手のことを信用していないってことじゃないの？」


攻撃の手を緩めず、遠慮なく本音をぶつけてくる妹は、

余程お姉ちゃんのことを信用している、という解釈でいいかい？


いや、しかし…


「ーーお姉ちゃん病人なんだから、優しくしてよぉ…」


身も心も弱り切っている今、その有り難い信用も受け止めきれないわ。



「…信用してるし、信頼してるよ。

でも、やっぱりあの人を困らせたくない…」



健気ぶるなと怒られそうなあたしの反論に、マキは何も言わなかった。









「ーー阿呆。

こないな嘘つかれる方が、よっぽど困るわ。」





代わりに応えたのは、耳馴染んだ声だった。

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