不要品回収（紫)

きっと向いていない ページ27

話を聞いてって言ったのに、やっぱり信五も何を話したらいいのか分からないのかな？


とりあえず部屋に入って、小さなローテーブルに並んだ料理を見て、

「食いながら話すか？」

って、信五の定位置に、ベッドを背もたれにするように座ったから、あたしも定位置、信五の左側に座った。


「何飲む？」


章ちゃんからの差し入れのアルコールを漁りながら聞けば、


「や、今日は、やめとく。
酒の力はいらん。」


って不自然なくらい背筋を伸ばして、武士みたいなこと言ってくるから、思わず笑ってしまったじゃないか。




少し緩んだ空気の中、


「章ちゃんのリクエストで名古屋めし買ってきたのに、食べずに帰っちゃったね…
お土産に渡せばよかった。」


天むすを頬張りながら、優しいお節介を焼くためだけに来てくれた章ちゃんを思い出して言えば、




「ーーなぁ…？
俺、間に合うたんよな…？」



斜め隣の武士が、テーブルの上で拳を握りしめていた。




"何に？"

と聞くほど、あたしは意地悪くないし、そもそもそんな余裕なんてないから。


「ーーギリギリ、セーフだよ…」


それでも多少の嫌味を込めて言ってやりたかったのに、上手くいかなくて、

泣き笑いみたいな顔に、声に、なってしまった。



「間に合って、よかったわ…」


ギュッと血管の浮き出ていた信五の拳が、緩く解かれた。







もう、これでいいのかな？

とも思う。


もうこれ以上、言わなくちゃいけないことも、聞かなくちゃいけないことも、ないのかな？って。


そうしたら、また、とりあえずは信五のところに戻れるのかな？って。









それでもやっぱり、聞いてしまうあたしは欲張りだろうか。




「ーーなんで、今日まで連絡くれなかったの…？」





見たことないような顔を、今日たくさん見せてもらえたんだから、もうそれだけでいい。


そう思う気持ちもあるのに。


やっぱりちゃんとした答えを出そうとしてしまうあたしは、きっと恋愛には向いていないんだろう。







「あたしは、信五にとって、必要なもの…？」








この空白の２ヶ月間が、答えなんだって、分かっているのにね…

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