眠れない夜に必要なもの ２（∞）

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「じゃあな、お疲れさん。」

「A、大倉、ばいばーい。」


「「おつかれ〜」」


同じ方面に帰る横山くんとヤスとは店の前で手を振って別れ、二人の背中を見送ると、


「ほれ、俺らも帰るで。」


と彼等とは逆方向のあたし達二人の利用駅に向かって歩き出す大倉。


その背中に、


「ごめん、久しぶりに飲んだせいか、今電車乗るのちょっとヤバそう…あたし歩いて帰るわ。
お疲れ。」


それ程酔った感じはないものの、上の方まで迫り上がってくる胃の圧迫感を配慮してそう告げると、


「…お前、ほんまに顔に出なさ過ぎやろ。
調子悪いなら早よ言えって。」


と呆れた顔で振り向いて、すぐにあたしの横に戻ってくると、


「どっかで座って休むか？」


怒っているのか心配しているのかよく分からない表情で聞いてくる。


「ううん、大丈夫。
電車の揺れがヤバいかもってだけで、歩いていれば治ると思うから。
電車の時間もあるし、大倉はもう行って？」


普段は腹の立つ事ばかり言ってくるが、こういう時は意外とシンプルに優しくて面倒見が良かったりするんだよな…

と、レアな大倉の優しさに感謝しつつ、駅に向かうよう促せば、


「そんなん言われて置いて帰られへんやろ、流石に。

まぁ、お前んち1駅やもんな。ええよなぁ、近くて。
俺もあの辺に部屋借りればよかったわ。

ほれ、行くで？」


そう言ってあたしの手を取って歩き出した。


「一人で帰れるから大丈夫だって！
ウチまで付き合ったら、大倉が終電間に合わなくなるよ？」


今の体調だと家まで歩いて20分はかかってしまう。

そこから大倉はまた駅に戻って、なんてしていたら終電を逃すかもしれないのだ。


そう告げて、慌てて掴まれた手を解こうとしたものの、


「Aんちの前でタクシー拾うからええわ。」


グッと力を込められて解く事を拒否された手はさっきよりも深く結ばれて、


「ほれ、歩けるんやったら行こ。」


そう言って促すように優しく引っ張られた。



こんな漫画のような振る舞いをスマートにこなすあたり、やはり正真正銘のイケメンなのよね…

と関心と感動を覚える。





ーーしかし…




〜♪〜♪〜


「あ、電話や。」


あたしと繋いでいた手を離すと、


「もしもし？
ああ。
明日？まぁ、ええけど、可愛い子来るん？

おん…じゃあまたLINE送っといて。はーい。」


どう聞いても合コンの打ち合わせを堂々と始める男になんて、


絶対にときめいてたまるか。

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