marriage of convenience【降谷零】

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｢確かに旦那さんだったんですか？｣
｢ええ、彼はどこにでもいるような人ではないので｣
｢そうですか……｣


この探偵は殺人事件などの大きな事件を解決したりしているようだが、浮気調査とか迷い猫探しとかそういった類のものを扱ったことがあるようには思えなかった。


｢実は僕、あまりこういった依頼は殆ど受けた事がないんですよ｣
｢そうですか｣

端から彼にどうにかしてもらおうと思ってもいなかったので、彼の前から立ち去ろうとするとそのまま彼は私の言葉を遮ってこう言った。

｢探偵であるからには様々な依頼に対応していきたいので、ぜひ僕に任せていただけませんか？｣
｢は……？｣

彼の言葉に目を丸くする。

｢やっぱり駄目ですか？｣
｢……ええ、結構です｣


確かに個人的には、優しい彼が何故結婚したばかりにも関わらずそんなことをしているのか気にならないわけではない。確かめるならば自分から彼に言えばいいだけだ。私は彼の事を信じている。
きっとあれは勝手に女性の方がくっついていただけで彼は抵抗するにもできなかったとかそういうやつなんだろう。

自分に言い聞かせるようにして、その場をあとにしようとする。



｢それでは……｣
｢あ、はい。急にすみませんでした……。でも、もしまた困ったことがあればいつでも聞きますので｣


ニコリと笑う彼に一礼して店を出る。
今自分は酷い顔をしているだろう。誰にも見せないように顔を伏せながら、早歩きで帰路についた。

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