第35話〈部屋の中〉 ページ36
・
ーーーーー閉ざされた部屋の向こう。
ドアの向こうは朝の明るさに反比例するように、暗い。薬品の匂いが強いその部屋の中心には、まだ幼い子供が緑の縫いぐるみで遊んでいた。なんの生き物か分からない縫いぐるみの黒い目を、子供は見つめている
｢今日も外に出られへんな｣
ポツリと呟いた言葉は静か空間に染み込んでいく。誰も反応することも無いその時間は、彼にとって当たり前の日常だった。
｢検診の時間よ、ゾム｣
zm｢はい。母さん｣
ゾムと呼ばれた少年は母さんと呼んだ人物に抱きつき｢撫でて｣と頬を緩ませる。そう言った彼の頭を撫でること無く母さんは、ゾムのボロボロの袖を捲り注射器を向けた
zm｢それ嫌や、いたい｣
嫌だと体を捻るゾムを押さえ付け、母さんは携帯を取りだし耳に当てる。慣れた手つきで紙に何かを記載し、口を覆う機械をゾムの口に取り付けた。
｢今日の栄養基準摂取量はオーバーしてないわ。これ以上食べないように取り付けも終わった｣
zm｢行かんといて！母さん、なぁ遊ぼうや｣
それだけ言った母さんは其の儘踵を返していく。縋るように足を掴めば顔を蹴られ、流れた鼻血は服を汚したが其れよりも取り残されたゾムは、わんわんと泣き出した
ーーーー構ってぇや、ひとりにせんで
それでもゾムは母さんと父さんを愛していた
撫でてくれなくても、抱きしめてくれなくても
ちゃんと二人は｢愛してる｣って言ってくれるから
zm｢愛してんで、母さん父さん｣
既に目の前で息をしなくなった二人に俺はそう言った。
母さんは俺を殴って、痛みを与えて愛をくれた
だから俺も母さんに同じ愛を返した
何度も、何度も力強い今迄の愛を返したんだ
父さんは俺に鼻が痛いほど強い臭いの水を与えた
だから同じラベルが着いた水をあげた
頭から、口から。皮膚が溶けてしまったけど
痛みが愛をくれた証なんや
zm｢母さん、父さん痛いの？嬉しいなぁ｣
二人はもう｢愛してる｣って言わなくなった
吐き気を催す程の臭いと痩せ細った体の傍に何年も居たのに、もう俺が欲しい痛みはくれない。
頑張って本を見て作った｢りょうり｣というものを置いても食べてなかった。して欲しかった二人の固くて白い頭を撫でても、その細く白い欠片が繋がった手で俺の頭は撫でない
あ、置いてかれたんやって気づいたんだ
だから探した。
俺の傍にいてくれる人を
本当は間違いだって、全部気づいとんのに
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1099人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かんぽ(プロフ) - タダノ・ミソニコミさん» コメントありがとうございます！中々進み具合が遅いので他の方と接触するのは、もう少し先やイベントの時に発展させていこうと思います！ (2020年7月14日 3時) (
レス) id: 9e38ce5fa2 (このIDを非表示/違反報告)
タダノ・ミソニコミ - もう、話の進み方がド性癖過ぎて語彙力溶けました、いつも無茶苦茶楽しみながらみさせていただいてます！毎回見るたんびに残念な頭で思考を巡らせながら読んでますw kn.utのシーンでどういうことだ？ってなりましたね…更新頑張ってください！後、大好きです！ (2020年7月14日 0時) (レス) id: 47c28898f7 (このIDを非表示/違反報告)
かんぽ(プロフ) - トーストさん» コメントありがとうございます！どうやって皆さんを入れてみようかと悩みながらも、時間が経ってしまいすみません！今日中には続編へ行けたらいいと思っています…！ (2020年7月12日 1時) (レス) id: 9e38ce5fa2 (このIDを非表示/違反報告)
トースト(プロフ) - 楽しく読まさせてもらっております。この作品めっちゃ好きです！作者様も好きです！(唐突な告白)体調に気をつけて更新頑張ってください！ (2020年7月11日 23時) (レス) id: 8d298a3565 (このIDを非表示/違反報告)
かんぽ(プロフ) - 仰げば尊死さん» 羨ましいです、元気100倍…。頑張っていきます！ (2020年6月23日 2時) (レス) id: 9e38ce5fa2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：H | 作成日時：2020年5月28日 1時
