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第十六話 死の悲しみ ページ17

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湧いてくる脱力感と同時に、私はガックリと肩を落とした。


それは騙された敗北感からか、はたまた笑顔の治くんが可愛い過ぎるせいか。



目を輝かせて愉しげに笑う治くんは何だかとても可愛らしくて、微笑ましい気持ちになる。


けれど、何だか心中にそこまで誘ってくると、治くんにとって私は死んでも別にいい存在なんじゃないかと思ってしまうのも確かだった。


そう思うと何だか無性に悲しくなってきて、私は無意識に口を開いていた。






「…治くんは、私に死んで欲しいの?」


「…えっ…」



私の言葉が相当予想外だったのか、目を見開かせた治くんが動揺したように瞳を揺らす。


それを悲しげに見つめながら、私は眉を下げて切なげに笑った。




「…私は、治くんが死んだら悲しいけどなあ」



苦笑気味に笑った私は、呆然と立ち竦む治くんの前を早歩きで歩き始める。


けれどその瞬間腕を引っ張られて、背後から強く抱き締められた。





「…ごめん、そういうつもりで云った訳じゃなかったんだ」



悲痛にそう云った治くんが抱き締める力を強くする。



「私はAに死んで欲しくない。君の居ない世界なんて考えられない」



きっと前世で生きていたら一生聞く事のなかった愛の告白。


珍しく余裕なく必死な治くんに、私は自然と笑みを溢していた。




正直云えば、本気で治くんが私に死んで欲しいと思っている訳じゃない事くらい分かっていた。


だってもう十年以上の付き合いだ。


治くんの考えている事くらい大体分かるし、治くんがどれ程私を好いているかもちゃんと分かっている。




けれど、もしいつか私が死んでしまった時、治くんが悲しんでくれなかったら正直辛いなあと思ってしまったのだ。


そう思うと無意識に聞いていた。



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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - I am gotさん» コメントありがとうございます!神作だなんて…!!(泣)こんな作者の作品を好いて下さり本当に有難うございます!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年7月21日 14時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
I am got(プロフ) - ヤバイ。神作。めっちゃ好きです!!続編楽しみにしてます!! (2019年7月21日 14時) (レス) id: dd6540e082 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 結月さん» コメントありがとうございます!沢山妄想しちゃって下さい!(笑)更新頑張ります! (2019年7月18日 10時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 今日も今日とて妄想させて頂いてます!更新待ってます (2019年7月18日 10時) (レス) id: 013547788b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月14日 16時

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