検索窓
今日:18 hit、昨日:18 hit、合計:518,285 hit

第十一話 馴れない ページ12

.





治くんが定位置となっている席に着き、私もそれに続いて作ちゃんと治くんの間の席に腰を下ろす。


治くんと作ちゃんが隣に座っているというのは、矢張りどうも馴れないものだった。





「マスター、いつもの」


「私もいつもの烏龍茶で」



間延びした声を出す治くんの隣で、私もいつもと同じ言葉で注文する。


するとマスターは微笑ましげな笑みを浮かべて、快く了承してくれた。



もう馴れてしまったやり取りだけど、こういう何気ない会話もどこか楽しく感じてしまう。


それはきっと、意外にも此処のマスターが私の中で結構身近な人間だからなのかもしれない。





此処のマスターはとても良い人だ。


客との距離感も分かっているし、礼節で大人っぽく落ち着きがある。


少しダンディーな雰囲気がこの店ともよく合っていた。



私達の事を詮索するような事はしないし、話し掛ければ感じ良く笑顔で返してくれる。


私がこのお店が好きなのは、そういうマスターの態度も含まれていた。





静かに置かれた烏龍茶を手に取ると、私はグラスを伝う透明な雫をじっと見つめる。


グラスを揺らせば、カランと氷のぶつかる小気味良い音が鳴った。



それに気分を良くして流し込むように烏龍茶を飲み始める。


正直お酒じゃないだけ気分は出ないけれど、それを気にせず飲んでいると唐突に隣に居た治くんが抱き着いてきた。




「A〜」


「わっ…!」



あまりに突然過ぎて危うく烏龍茶を溢しそうになるものの、何とかそれを防いでゆっくりとテーブルに烏龍茶を置く。



甘えるように強く抱き着いてくる治くんに内心苦笑いを溢しながらも、私は優しく包み込むように抱き締めてあげた。


そのまま頭を撫でて上げれば、嬉しそうに目を細めている。




.

第十二話 心中の誘い→←第十話 Lupin



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (387 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1213人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - I am gotさん» コメントありがとうございます!神作だなんて…!!(泣)こんな作者の作品を好いて下さり本当に有難うございます!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年7月21日 14時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
I am got(プロフ) - ヤバイ。神作。めっちゃ好きです!!続編楽しみにしてます!! (2019年7月21日 14時) (レス) id: dd6540e082 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 結月さん» コメントありがとうございます!沢山妄想しちゃって下さい!(笑)更新頑張ります! (2019年7月18日 10時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 今日も今日とて妄想させて頂いてます!更新待ってます (2019年7月18日 10時) (レス) id: 013547788b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月14日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。