第二十三話 お願い事 ページ26
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芥川くんに会ってみたかった、なんてそんな事を言ったあかつきには更に治くんが怒りそうなので、一応半分嘘で半分真実な事を言った。
最下級構成員は仕事量が少ないし簡単なものばかりだ。それに伴って給料は低いけど、普通に暮らしていけるくらいは有る。
とはいえこういう組織の忙しい時は嫌でも暇になってきてしまう。それに今日は元々いつにも増して仕事量少なかったし。
だからまあ、暇だったからちょっとうろちょろしていた、と簡潔に私は治くんに言ったわけだけれど、当然そんなもので納得してくれる筈もなく。
「私、凄く心配したのだけど」
「うっ……ご、ごめんね」
「…じゃあA、一つだけ私のお願いを聞いてくれるかい?」
抱き締めながら肩に顔を埋めていた治くんが唐突に顔を上げて私に言う。
その表情を見て、私は思わず頬が引き吊るのが分かった。
長年一緒に居るせいで、治くんの癖や考えてる事が私は結構分かる。そして今浮かべる笑みが何か企んでいるものだという事も。
「…ま、まさか心配したっていうのは…」
「それは本当だよ。実際このままAが目覚めなかった場合、私も死のうと確実性の高い拳銃を用意していた位には心配したからね」
治くんの良い笑顔で放たれた言葉に、私は石像のようにピシリと固まった。
うん、正直目覚めて良かったよ。いや、本当に。治くん死んだらシャレにならない。
「……それで、お願いって?」
気を取り直して治くんに問いかける。
まあ治くんのお願いなら、私にできる範囲内であれば叶えるつもりだ。寧ろ叶えないという選択肢は私にはない。
でも一体何だろうか。治くんからのお願いって地味にレアな気がする。
「…じゃあもうすぐあるイベントって言ったら?」
「治くんの誕生日」
「ふふっ、さすがA。即答だね。…その私の誕生日に、休暇を取って欲しいんだ」
と言うかそれってわざわざお願いなんて言わなくても毎年そうしてると思うんだけど。
治くんなりの保険だろうか。
それにしても相変わらず笑顔が眩しい。そして実に可愛い。
そしてそんな可愛い治くんももうすぐ17歳。時が経つのは早いものだなあ。
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黒猫もふお - 神作品を発見してしまった……これが現実だったらいいのに……… (8月3日 11時) (レス) @page45 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
梅林 - 物語も面白いし、何より、え、もう太宰さんが可愛すぎてこっちが可笑しくなりそうでした。本当にもう泣きそうなくらい可愛かったです!!これが現実では無いと思うとめっちゃ悔しくなります(;o;) (2020年2月27日 2時) (レス) id: 837f5e2707 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 真菜さん» コメントありがとうございます!そんな風に思って下さってるなんて…!もう嬉し過ぎて涙が出ます!!(泣)本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きます!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
真菜(プロフ) - とても面白くて、大袈裟に感じるかもしれませんが、これを楽しみに毎日過ごしてます!リメイク版も楽しみにしているので、自分のペースで頑張ってください!!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: ef2b815640 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 東雲 祀さん» コメントありがとうございます!太宰さん可愛いですよね(笑)。楽しみにして下さって本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年6月29日 18時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年5月21日 14時