9夜 ページ9
そう言って、僕はぎこちなく笑った。
「緑谷。
今度陽・・・真衣も一緒に3人で飲みにいかないか？
俺が奢るから」
「え？
いきなりどうした？」
「・・・大切な仲間の婚約祝い」
轟くんは少し照れ臭そうに言う。
彼が照れることはなかなか無いので、非常に嬉しかった。
「勿論！
真衣ちゃんと相談して空いてる日、連絡するね」
・
・
・
僕の両親へ挨拶をしに行く前日の土曜日。
入っていた仕事は、後輩のプロヒーローが代わってくれた。
そして今、真衣ちゃんは僕に、明日着て行く服のアドバイスを求めている。
室内はさながらファッションショーだ。
ちなみに、彼女の両親への挨拶は無事に終了していた。
万が一反対されたらどうしようと不安に駆られたが、それは杞憂に終わったのだ。
真衣ちゃんの両親は僕が義理の息子になることを、快く了承してくれた。
「あのさ、そんな堅苦しく考えなくても良いと思うよ」
「ダメ。
こういうことは、きちんとしないと！
第1印象って凄く大事なんだから」
「第1印象が大事なのは僕も分かってるけど、そこまで神経質になる必要はないよ。
だらしなくない格好なら大丈夫。
今の服装で、充分魅力的だよ」
彼女は淡い黄色のスカート、白いブラウス、薄手のカーディガンを着ている。
清潔感に溢れていて好印象だ。
「・・・出久くんがそう言うなら、信用することにする」
そう言った言葉とは裏腹に、難しい顔をする真衣ちゃん。
「大丈夫だよ、真衣ちゃん。
僕の両親は、値踏みするように人を見ないから。
・・・そうだ！
これから買い物に行かない？
明日履いて行く靴とか見に行こう。
その方が気が紛れるかもしれないし」
「うん・・・」
僕は帽子を深めに被り、マスクをする。
そして真衣ちゃんと共に、彼女のお気に入りのショッピングセンターへ向かった。
丁度お昼時だったので、先に最上階の中華料理店に入る。
やはり、外に出て正解だった。
先程より、真衣ちゃんはいくらか柔らかな表情をしている。
まず彼女の注文した料理が運ばれてきた。
「どうぞお先に」と、僕は真衣ちゃんを促す。
彼女が食べ始めて3分後くらいに、僕の料理がテーブルの上に置かれた。
「そういえば、轟くんのことで話があった」
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作者名：なずな x他1人 | 作成日時：2018年9月12日 20時
