ダズル 2 (Kei)

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「…え?」









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驚きのあまり間の抜けた声。









廊下は斜めに振り込む雨のせいで

すっかり濡れてしまっていた。









そこに、いつかと同じズブ濡れの人影…









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「なん、で…」









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まるで、野良猫みたいに

立てた片膝に顔を埋めた格好で。









まるで、ずっと帰ってこない飼い主を

待つような姿で。









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蹲る人影との距離は1メートルもない。

ただただ私は目を見開く。









そして、その顔はゆっくりと上がって…

私を見た。









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「……こんな所で、何してるんですか?」








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バクバクと心音がうるさい。

口のなかが渇いて、気持ち悪い。









だけど、私の口を突いて出た台詞は

至って冷静だった。









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「……雨宿り。」

「え?」









「うそ。」









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濡れた前髪から涙の粒に似た雫を滴らせながら、

その人は、ゆるりと瞳を細めた。









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慧「……Aに会いに来た。」









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久しぶりに聞く、少し鼻のかかった声。









掠れた声に、鼓膜が疼いた。

潤んだ瞳から逸れることは、許されない。









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慧「…俺、行くとこないし、猫でいるの疲れた。」

「は……」









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帰って来たと思えば、

何変なことを言ってるんですか…









そう言おうと、口を開いたとき……









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慧「だからさ……今度は俺に飼われない?」









***

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