【Wrwrd!】推しは眺める派のモブなんですが？ (ページ7)

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タンタン…と階段を上がっていけば、目の前には鉄の扉が。
扉には、【屋上】とだけ書いた板が貼り付けてある。
ドアノブに手を掛けて、ゆっくりと扉を開く。

扉の隙間から漏れる光が眩しくて、一瞬開くのを躊躇うが
頭をぶんぶんと横に振って、一気に扉を開いた。

『うわぁっ…！風強っ！』

緑の葉が空に舞っていて、何だか凄く心が落ち着く。
これなら、嫌なことも忘れられるかな…

と思っていた時。

？？？「…誰だ？」

声のする方に振り返れば、本日何回目かの我々メンバー。

金髪に、深い赤目の人形のような顔立ちと
優しく重みがある、バリトンボイス。

彼は訝しげにこちらを見つめていて、何だかとても威圧感がある。

gr「俺はグルッペン･フューラーだ。お前は？」

また攻略対象か。
大好きな彼が目の前に居るのに、それしか考えられない。

そう考えたのと同時に、ゾムの顔が頭をよぎる。
所詮、ただのモブに過ぎないと思い知ったあの時。
段々と視界がぼやけてきて、目頭が熱くなる。

そして遂には涙を流してしまい
その涙がポタポタと地面に落ちていく。

『…あ、れ。』

拭っても拭っても、涙は止まらない。
それに、止めようとする度に、
心にできた深い傷が抉られていく感覚がする。

『ご、ごめんなさい、グルッペンさん。私、帰り…』

帰りますね、そう言いかけた時。
腕を引かれ、グルッペンの胸に倒れ込んでしまう。

gr「話は後で聞こう。今は落ち着くまで泣くと良いゾ」

何の気まぐれだろうか。こんなモブに優しくするなんて。
でも、前世でも愛していた彼が。
優しくて、でも何処か邪悪さも混じっているような彼の声が。

彼の全てが私に向けられているようで
心は暖まっていくばかりだ。

『うっ…ふぇぇえ…！』

声を上げて泣くと、
割れ物を扱うかのように、優しく私の頭を撫でるグルッペン。

gr「何があったのかは知らないが、溜め込むのは良くない。
辛いのなら、辛いと言えば良いだろう。
その相手がいないのならば、俺がなろう。
辛いことも苦しいことも、沢山味わおうじゃないか。
それと同時に、楽しいことや嬉しいことを倍味わおう。
どうだ？俺の友達になってみないか？」

ははっ…と楽しそうに笑うグルッペン。

顔を見ると、目は真っ直ぐ前を見ていて、決して嘘を付いていないようだ。

『友達…良いの？』

グルッペンを見て聞くと、勿論だ！と笑われる。
心がドクン…と波を打つような、そんな感覚に囚われた。
次は、期待しないように、なんて。