卅頁 ページ31
腹を貫く刃の先からぽたり、ぽたりと血が滴り落ち、床を赤く染める。
「………げほ……」
「……兄が弟を庇ったか。まあ邪魔者は減った」
小さな体を滑り込ませ、弟を庇った修治は誰がどう見ても致命傷だった。
「…………………」
「……まだそのような余力が残っておったか。しかし、無駄なこと」
鎌の持ち手を掴み、引き抜こうとする先代の手を止める。
ごぽりと修治の口の端から血液が流れ出て、白い服を汚す。
だが顔は平然としたまま、蘭堂の屋敷の庭で雲を見ていた時と同じように淡々としていて。
「____________そこか。」
不意に、目を細めて笑ったような表情を先代に向けた瞬間、先程投擲した筈のナイフが、意思を持ったように後頭部から先代の眉間を貫いた。
貫いた瞬間、硝子が割れたような澄んだ音が響き砂のように先代の体が崩れ始める。
「なっ……!!!!」
「おわかれだな。さようなら」
殺人を犯した子供は、邪気が一切ない、まさしく天使のような笑みを顔に浮かべていた。
そして、完全に先代の体が崩れるのを見届けて腹から鎌の刃を抜く。
血がさらに流れ、もう既に人が死んでも可笑しくない……
否、死んでいないと可笑しい怪我をしているにも関わらず、修治は二本の足で立っていた。
「……治、俺はもうむりだ」
そう云って後ろに振り向いた修治の周りに蒼い光がきらきらと浮かんでいる。
「…まあ、こっちは大丈夫だから心配しなくていいよ。…おやすみ」
「……ん」
蒼い光は次第に修治の体を包み込み、やがて全てをおおいつくして消える。
光が消えた時、修治の姿は無かった。
「おい太宰、彼奴は…」
「…そんなことより蘭堂さんに集中しなよ。僕、君と心中なんて絶対に嫌だからね」
「安心しろ、俺もだ」
残された少年達はそう軽口を云い合い、敵を真っ直ぐ見据えた。
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「おはよう、母さん」
白いベッドに横たわっていた青年は、起き上がるとそう云って静かに微笑んだ。
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ロト - よみさん» コメントありがとうございます。面白いと言っていただけてとても光栄です。続きが気になる作品だったなんて本当に嬉しい誉め言葉です。ありがとうございます! (2020年1月7日 13時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
よみ - 受験頑張って下さいね。とても、面白くて、続きが気になる作品だと思っているので、早く二月になれ!っと祈りながら、更新お待ちしております。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 587f0ad974 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロト | 作成日時:2019年8月1日 18時