【文スト】太宰治の奮闘記録

慰め方 ページ5

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『いや、遠慮しときます』



否、相手はA、そう簡単に決まる訳がなかった



「如何してさ」

『だって其れって、相手は太宰さんって事ですよね』

「私じゃ不満かい？」

『大いに不満です』

「わあ辛辣」



一寸所の騒ぎじゃない、かなりぐっさり刺さった


今朝、何処かのちびっこマフィアに華麗に振られてこいって云われたけど、これは華麗過ぎる


真面な告白もしていないのに、軽く五回は振られた気分だ



「もう駄目私、落ち込んで歩けない」

『ええ、歩いて下さいよ、涼しい所行きましょうよ』

「なら慰めて」



立ち往生した挙句腕を広げて待つ私を、引き気味に見上げたA


生憎だが、今更そんな視線にはめげない


尚も待ち構えている私に、一歩、歩み寄ったAが、手を伸ばした



真逆の行動である



『――ああ、矢っ張り』

「何？」

『太宰さん、髪の毛耳に掛けた方が、あの主人公よりも男前に見えますよ』

「………」


少し背伸びし乍ら私の髪を片方耳に掛けて、さらりと一度梳いてから、微笑んだ彼女



―――何この子、何なのこの子


「抱きしめてもいい？」

『暑いのでやめて下さい』

「判った我慢する」



おそらく、無意識でやっているのだろう

だとすれば私は一体、この先どれだけ我慢の山を積み上げる事になるのだろうか


或いは限界突破するのが先か



まあ、絶対に嫌われたくないし、傷つけるなんて以ての外なので、其れだけは避けたい所だが



『あれ？太宰さん、機嫌直りました？』

「………直ったよ」

『其れは良かったです！さあ！涼しい所を探しましょう！』



――嗚呼、連れて帰りたい…


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